アルコール燃料 アルコール燃料の将来性

アルコール燃料

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/13 02:52 UTC 版)

アルコール燃料の将来性

アルコールと水素

現在の化石燃料の需要は燃料としての水素へ移行するとおもわれ、水素経済とでもよばれる状況を形成しつつある。ある説によると、水素そのものは燃料資源としてみなされるべきではないという。この説によれば、水素は(太陽光発電バイオマス、あるいは化石燃料といった)エネルギー源とエネルギーを使用する場所のあいだに存在する一時的なエネルギー貯蔵媒体であるという。実際水素はガス状態にあると、他の燃料に比べて膨大な容積を占め、エネルギー配送の点に関して非常に難しい問題になっている。1つの解決方法としてエタノールを使って水素を配送する方法がある。 それは配送先で水素再生(hydrogen reform)により水素を結合している炭素から遊離させ、燃料電池へ供給する方法である。ほかの方法としてエタノールを直接燃料電池の燃料として供給する方法もある。

2004年初めには、ミネソタ大学の研究者は単純な構造のエタノール燃料電池を開発したと発表した。それは、触媒層にエタノールを透過させて必要な水素を燃料電池に供給するのである。 装置は一段階目の反応にロジウム-セリウム触媒を使用するが、そのとき反応温度は約700℃に達する。一段階目はエタノールと水蒸気の混合物と酸素を反応させ十分な量の水素を発生させる。 あいにく、副生成物として一酸化炭素が発生し、この物質が燃料電池を詰まらせる。なので別の触媒を透過させてそれを二酸化炭素に変換する。最終的には、この単純な装置はおおよそ50%の水素と30%の窒素からなるガスを生産する。残りの20%は主成分は二酸化炭素である。不活性な窒素と二酸化炭素とともに水素の混合ガスは適当な燃料電池にポンプで送られる。その後、二酸化炭素は大気中に放出され、植物により再吸収されることになる。

温室効果ガス

アルコール燃料経済への転換の長所のうちの一つで、そしておそらくもっとも重要なものは温室効果ガスである二酸化炭素の総排出量の低減である。エタノールの製造と消費でCO2を放出したとしても、植物が吸収するであろう。対照的に、化石燃料の燃焼ではアルコール燃料の場合のような受け皿無しに、膨大な量の"新たな"CO2が大気中に放出される。

言うまでもないが、この長所は農業生産エタノールについてのみ生じ、石油から転換されるエタノールの場合は生じない。そして、ほんのわずかではあるがコストが小さいため、工業的に消費されるアルコールの大部分を占めるのは、天然ガス由来のアルコールである。農業生産エタノールへの転換のためのコストを総計する場合には、この点を評価に入れるべきである。

石油の有効利用/再生可能エネルギー

農業生産のアルコールの一方の長所は、再生可能なエネルギー源である点である。これに対して有限な石油の用途のうち、発電は原子力や各種再生可能エネルギーで、工業燃料は石炭で、暖房灯油は天然ガスで、自動車燃料はアルコールや圧縮天然ガスで代替可能であるが、船舶燃料重油・航空燃料ジェット油は石炭液化で作ると高コストであり、合成樹脂を石炭原料で作ると非常に高価になってしまう。つまり、貴重な石油は石油化学や船舶用ディーゼル燃料、航空ジェット燃料のために節約して使うべきであり、発電や、自動車燃料などの用途に使ってしまうのは本来は勿体無い資源といえる。そういう意味で石油の「ノーブルユース」が問題になっており、自動車燃料用アルコールが期待されている。


注釈

  1. ^ 超臨界水を使用したりして分解していた。
  2. ^ 第二次世界大戦航空用エンジンレシプロガソリンエンジン)には充填効率を高める目的で水メタノール噴射装置を備えたものがあるが、この場合のメタノールは、気温の低い高空での水の凍結を防ぐための添加剤としての役割が主である。
  3. ^ そのほとんどがアメリカ向けであった。そのためアメリカ国内にMTBE製造設備を有していた。

出典

  1. ^ 石油とエコ バイオガソリンについて 石油連盟
  2. ^ 調査報告 シカゴ 米国における再生可能エネルギー及びバイオエタノールの政策及び産業動向(その2) (PDF) p.11参照
  3. ^ レスター ブラウン「フード・セキュリティー―だれが世界を養うのか」、ワールドウォッチジャパン、2005年4月、ISBN 978-4948754225 
  4. ^ 第27回農業環境シンポジウム 「食料 vs エネルギー -穀物の争奪戦が始まった-」 (概要報告)
  5. ^ バイオ燃料が食卓を脅かす
  6. ^ a b c d セルロースを分解しディーゼル、アルコール等を作る新しい微生物
  7. ^ 正念場を迎えた米国の第二世代バイオエタノール(2)
  8. ^ 食料と競合しないバイオ燃料
  9. ^ UM Scientists Find Key to Low-Cost Ethanol in Chesapeake Bay
  10. ^ セルロース分解細菌「Saccharophagus dengradans」の パイロット試験
  11. ^ シロアリによるバイオエタノール製造に弾み
  12. ^ シロアリがエタノール生産の救世主に? 代替燃料技術の現在
  13. ^ シロアリの腸からバイオ燃料生産効率を高める新酵素を発見
  14. ^ 国エネルギー省(DOE: Department of Energy)の共同ゲノム研究所
  15. ^ “廃材をバイオ燃料に”. 沖縄タイムス ( 沖縄: 沖縄タイムス): pp. 1面. (2008年7月3日) 
  16. ^ シロアリの新しい利用法
  17. ^ シロアリ腸内共生系の高効率木質バイオマス糖化酵素を網羅的に解析
  18. ^ バイオエネルギー生産のためのシロアリ共生系高度利用技術の基盤的研究
  19. ^ 同規則第10条の2第2項(揮発油規格の特則)
  20. ^ RITEバイオプロセスの概要地球環境産業技術研究機構
  21. ^ バイオ研究グループ・バイオリファイナリー生産技術開発及び実用化開発に向けた取り組み地球環境産業技術研究機構 2016年
  22. ^ MSUエタノールエネルギー収支調査 (PDF)
  23. ^ 再生可能燃料協会
  24. ^ Kovarik 未来の燃料
  25. ^ エタノールと石油に関する税的優遇措置 (PDF) (Tax Incentives for ethanol and petroleum):合衆国会計検査院, 2000年9月
  26. ^ "PETROBRAS MTBE Unit Retrofit to Isoctane Production". 25 September 2005. 2023年10月2日閲覧
  27. ^ アメリカでの自動車用ガソリンへのMTBE添加禁止政策によりMTBE製造設備の廃棄またはETBEへの製造設備転換、イソオクタン製造設備への転用が模索された[26]
  28. ^ Saudi Muslim scholar says running cars on bio-fuels could be 'sinful' Dubai News.Net 2009年2月22日)






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