アカラシア 治療法

アカラシア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/05 19:09 UTC 版)

治療法

薬物療法

初期で発見されることが少ないため、初期の症状に有効な治療法は確立されていない。敢えて考えられる治療法としては、

  1. 漢方薬(芍薬甘草湯、等)の経口投与
  2. ビタミンB12製剤の経口投与(1.5mg/日 程度以上の大量投与で初期の末梢神経障害の回復に効果)
  3. カルシウム拮抗薬の投与(血圧降下作用があるため、低血圧の患者や日常生活を送る患者には向かない)

等の内科的治療がある。症状が完全回復したという報告はなく、悪化の程度を抑制するために投与を続ける必要性があると言われている。

内視鏡下バルーン拡張術

中程度の症状には、バルーンを用いて、食道を拡張することによって通過障害を取り除く。効果は一時的であり、根本的な治療とは言えない。

腹腔鏡下手術

重度の症状の場合は、腹腔鏡を用いた外科手術による方法が一般的である。「Heller筋層切開術」と呼ばれる方法で食道の筋肉を開いて通過障害を取り除き、「Dor噴門形成術」と呼ばれる方法で、噴門部からの胃液の逆流を抑制する(食道は胃液を保護する粘膜がないため、噴門部が開いたままだと食道炎、食道癌を併発する)。多い病院では年間20例ほどの手術が行われており、外科的治療法としては確立していると考えられる。

内視鏡的筋層切開術

新しい根治的治療として経口内視鏡的筋層切開術(POEM:per‐oral endoscopic myotomy)が発案され、低侵襲治療として注目を浴びている。POEMでは腹腔鏡手術と異なり、体表に傷がつかないことが外科手術治療との大きな違いである[1][2]

補足

日本における発症率は10万人に1人程度とされているが、潜在的な発症率はもう少し高いと考えられる。実際、アカラシアの分野は消化器内科よりも消化器外科で発達しており、症状から消化器内科で診察される場合がほとんどであるが、症状が特定されない、もしくは誤診されたまま症状が悪化し、食道癌等になってしまうことによって、アカラシアという初期の原因が見過ごされているケースが少なくないと言われる。

日本人と比べて欧米人の方が発症率が高く、一般的に、食生活の違いが原因ではないかと推察されている。日本においてアカラシアの発症件数が増えているとの報告もあるらしいが、これも日本人の食生活が欧米化していることが原因ではないかという推察の根拠の一つとなっている。


  1. ^ Inoue, H.; Minami, H.; Kobayashi, Y.; Sato, Y.; Kaga, M.; Suzuki, M.; Satodate, H.; Odaka, N. et al. (2010-03-30). “Peroral endoscopic myotomy (POEM) for esophageal achalasia”. Endoscopy 42 (04): 265~271. doi:10.1055/s-0029-1244080. PMID 20354937. 
  2. ^ 井上 晴洋; 工藤 進英 (2010). “現代医学の焦点(336)食道アカラシアに対する経口内視鏡的筋層切開術(POEM)の臨床”. 日本臨床 68 (9): 1749~1752. PMID 20845759. https://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I10797126-00. 


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