アイヌ語 アイヌ語の方言

アイヌ語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/11/22 14:38 UTC 版)

アイヌ語の方言

アイヌ語の方言は大きく北海道、千島、樺太に分けられる。

また東北北部の蝦夷がアイヌ語を話していたとする説もある(エミシアイヌ語)。

アイヌ語の文章

文章化の試み

歴史的にアイヌ自身によってアイヌ語を文字で連ねた文章の形で記したテキストはみつかっていない。ただし、ユーカラとよばれる口承文学口碑は存在した。近年はアイヌタイムズを例として、カタカナやラテン文字、キリル文字による文章化の試みが浸透しつつある。

アイヌ語には多くの方言体系の存在が知られている(「アイヌ語方言」を参照)が、伝統的なアイヌ語話者全体あるいはその大部分を統べるような中央集権的支配者、宗教的権威、あるいは文化的中心が歴史上存在しなかったこともあり、他を圧倒する方言(あるいは言語変種)の体系が存在しない[14]。その為、アイヌ語を文字を使って体系的に表現する場合すなわち文章化する際には、規範となりうる共通語あるいは規範的な書記体系(書記言語)や正書法が存在しないという困難がある。

アイヌ語には文章化する際のオーソライズされた形式・体系が存在しないもののそれに準ずるとみなし得る試みがみられ、北海道ウタリ協会が編集したアイヌ語テキスト『アコ イタ』が出版されて以降は、『アコ イタ』で範示されている文章表記に基づいた、各方言の文章化が多くなされている。

また、英語などを通じてローマ字表現に慣れ親しんでいる人たちを除いて、カタカナ表記に慣れ親しんでいる日本語母語話者を中心にした日本語を使用する人々には、ローマ字よりカタカナによるアイヌ語表記が好まれる場合が多い。ただし、カタカナ表記は、出版物やワープロやパソコン上で音節末の子音を表現するための小さいカタカナを記す際、わざわざ活字の大きさを小さくしなければならないなど、大きな問題点があった。

文字(カナ表記)

アイヌ語の仮名による統一された正書法が存在するわけではないが、各方式が大きく異なるわけではない。日本語にない音を表記するために、いくつかの専用の文字を使用する。

「ca・cu・ce・co・ye・we・wo」などは日本語と同様に「チャ・チュ・チェ・チョ・イェ・ウェ・ウォ」と表記する。

tuは、「トゥ」、または「ト」に半濁点がついた「ト゚」(ト゜)、あるいは「ツ」に半濁点がついた「ツ゚」(ツ゜)(括弧内は代用表記)で表記される。

音節末のtkpmnはそれぞれ、「」、「」()、「ㇷ゚」()、「」()、「ン」(括弧内は代用表記)で表記される。

音節末のsは多くの場合「」()と表記するが、発音の状態によって「」()と表記される。

音節末のrは直前の母音に則した書き分けをし、それぞれ「」()、「」()、「」()、「」()、「」()(括弧内は代用表記)で表記される。

単語は分かち書きする。人称接辞は中黒「・」で区切って書かれることがある。それ以外の記号は日本語と同じつかい方をする。

2000年1月にJIS規格としてJIS第三水準漢字(記号類を含む)・JIS第四水準漢字が新規に制定され、このうちのJIS第三水準漢字にアイヌ語カナ表記用の拡張カタカナ(日本語の文章に通常使用される範囲外での小文字カタカナや半濁音付きカタカナ)も含まれている。

ISO規格に採り入れられている Unicode では、2002年3月に改定された Unicode 3.2 から JIS X 0213 に追随する形でアイヌ語カナ表記用の拡張カタカナ (Katakana Phonetic Extensions) が追加されており、同規格に対応したソフトウェアでアイヌ語カナ表記が扱える枠組みが整えられた。ただし、一部の文字は合成を用いないと表現できないという Unicode 特有の問題があり、ソフトウェアによってはきれいに表示できないことがある。

  • アイヌ語カナ表記用の拡張カタカナ(Unicode 3.2準拠)
代用表記に関しては、小文字カタカナは通常サイズのカタカナの縮小表示、半濁音は通常の全角半濁音記号を付与。
文字 代用表記 文字 代用表記 文字 代用表記 文字 代用表記
ㇷ゚
セ゚ セ゜
ツ゚ ツ゜
ト゚ ト゜

パソコンでアイヌ語カナ表記(Unicode 3.2準拠)を扱う場合、

  • Macintosh では、2001年の Mac OS X 10.1 Puma 以降でのOS標準フォントはアイヌ語カナ表記用の拡張カタカナにも対応している他、2003年の Mac OS X 10.3 Panther 以降でのOS標準文字入力システムことえり4からはアイヌ語入力モードも採用された。
  • Windowsでは、2007年のWindows Vista以降のOS標準フォントはアイヌ語カナ表記用の拡張カタカナにも対応しており、2001年のWindows XPと2003年のWindows Server 2003については標準では対応しないものの対応版フォントを無償でダウンロードできる。(JIS2004対応フォント(KB927489)
    • 2008年現在 Windows の標準状態ではアイヌ語カナ表記入力機能を備えていないものの、カナ表記入力を可能にするためのユーティリティなどが有志により作成公開されており[15][16]、アイヌ語カナ表記用の拡張カタカナにも対応する商用フォントやフリーフォントも増えつつある。
      • (対応フォント一覧は ainu_exchange[17]の取扱説明書内で記述されている)

文字(ローマ字表記)

「発音」の節を参照。アクセント表記にはアキュート・アクセント付きラテン文字の「á」「í」「ú」「é」「ó」を使用する。

通常アクセントを省略して例外アクセントのみ表記したり、全てのアクセントを省略してアルファベットのみで表記したりすることもある。

文学

アイヌ語で文字使用が試みられる以前のアイヌの文学は全て口承のもので、民話・神話には非常に富んでいる。アイヌ語の叙事詩ユカまたはユーカと呼ばれる。ユーカの内容は、動物の神があらわれて体験を語るものや、人間の世界の恋愛や戦いを歌うものなど多様である。叙事詩のほかに、いわゆる昔話のような散文による伝承文学もある。

アイヌ語の語彙




  1. ^ UNESCO Atlas of the World's Languages in Danger
  2. ^ Bradley, D. Languages of Mainland South-East Asia (2007) In O. Miyaoka, O. Sakiyama, and M. E. Krauss (eds.), The vanishing languages of the Pacific Rim, pp. 301–336. Oxford Linguistics. Oxford: Oxford University Press.
  3. ^ 英語: critically endangered
  4. ^ 消滅の危機にある方言・言語,文化庁
  5. ^ 八丈語? 世界2500言語、消滅危機 日本は8語対象、方言も独立言語 ユネスコ”. 朝日新聞 (2009年2月20日). 2014年3月29日閲覧。
  6. ^ 他の7言語は与那国語八重山語が「重大な危険(severely endangered)」、宮古語沖縄語国頭(くにがみ)語奄美語八丈語が「危険(definitely endangered)」に分類されている。
  7. ^ Ethnologue.com. “Ethnologue report for Ainu” (英語). 2013年3月29日閲覧。
  8. ^ Juha Janhunen; Tapani Salminen. “Endangered languages in Northeast Asia/ report” (英語). 2007年9月29日閲覧。
  9. ^ 「八丈語? 世界2500言語 消滅危機——「日本は8言語対象 方言も独立言語」ユネスコ」『朝日新聞』2009年2月20日付夕刊、第3版、第1面。
  10. ^ アイヌ語・アイヌ口承文芸 - アイヌ語の未来と音声資料の重要性”. 二風谷アイヌ文化博物館. 2015年7月4日閲覧。
  11. ^ 「先住民族サミット」アイヌモシリ2008「日本政府への提言」(2008年7月4日)
  12. ^ 寺島良安『倭漢三才圖會』(復刻版)吉川弘文館、1906年(明治39年)、213-214頁
  13. ^ 知里真志保による。出典:平凡社世界大百科事典
  14. ^ アイヌ語母語話者あるいは習得した話者も含めての各方言別の話者数の比較によって他の方言に優越する方言が存在する可能性はある。また、辞書や研究文献の過多によるアクセスの難易は各方言で差が存在する。
  15. ^ ROM作成物サポートページ - ainu_exchange”. 2007年9月29日閲覧。
  16. ^ アイヌ語入力-試作品その3”. 2007年9月29日閲覧。
  17. ^ ROM作成物サポートページ
  18. ^ 新谷正隆:西木村のアイヌ語地名、秋田地名研究年報20(2004)19-27.]
  19. ^ (入内地区について)
  20. ^ 田子町プロフィール
  21. ^ アイヌ語地名考
  22. ^ 「ひら-(平、比良)」を平らではなく pira "崖"と解釈する方法。ただし、広(ひろ)、拓/墾(ひら)く、などと同語根であることにも留意
  23. ^ 新潟県粟島浦村の地名
  24. ^ 久慈市周辺のアィヌ語系地名
  25. ^ 鈴木健『縄文語の発掘』
  26. ^ 菱沼右一『アイヌ語より見た日本地名新研究』第一書房 (1982)







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