アイスホッケー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/25 01:15 UTC 版)
スケートを用いるため、グラウンド上の同種競技と比べ格段に速いスピードが出てゲームをスリリングなものにするが、接触等による危険が高いため全身に防具を装着してプレーを行うことが義務づけられている。
アイスホッケーが盛んな国として、世界ではアメリカ、カナダ、ロシア、スウェーデン、フィンランド、チェコ、スロバキア(1993年以前、前2国はチェコスロバキア)、ベラルーシ、ラトビア、スイスなどが挙げられている。冬季オリンピックなどでこの競技を統括する国際アイスホッケー連盟(IIHF)の加盟国(または地域)は2015年現在で74か国になっている。
歴史
アイスホッケーの起源については、さまざまな説がある。
16世紀のオランダの絵画(例えば、Romeyn de Hooghe や Hendrick Avercamp の作品)には凍結した運河の上で、市民がホッケーに似たようなスポーツを行っている光景が描かれている。もっとも、これらの絵画で描かれているスポーツは、ホッケーというよりはむしろゴルフやポロに近いとする説もある。
スコットランド発祥のシンティ(Shinty)、アイルランド発祥のハーリング(Hurling)、ネイティブアメリカンのチペア族のプレイしたバゲタウェイ(Baggataway)などのスポーツが起源であると考える説もある。これらのスポーツについて近代的なアイスホッケーとの主な相違点を挙げると、シニーやハーリングにあってはゴーリーが不在、スケート靴を履かない点があり、バゲタウェイにあっては出場選手の数が多い点などがある[1]。このほかにもホッケーの原型に当たる競技として、イングランドのバンディ(Bandy)やフィールドホッケー(Field Hockey)、カナダのシニー(Shinny)やリケット(ricket、ノバスコシア)、米国のアイス・ポロ(Ice polo)などが挙げられる。
1763年にフランスからカナダ領土を勝ち取ったイギリス人兵士達は、フィールドホッケーの経験と、ノヴァスコシアの原住民が行っていた競技、ラクロスを組み合わせ、凍結した河川、湖、池などでカナダの長い冬の慰みとしたと伝えられる。フィールドホッケーのボールは余りにも飛びすぎて危険だったため、ボールを小さめにして飛ばないように工夫をされたという。またサッカーやフィールドホッケーと同じくゴールの代わりとして氷柱を代用したり、また両チームが均等な人数ならば試合が可能とされていた時代もあった。
近代的なアイスホッケーの起源のみに限定しても、カナダのモントリオールとする説の他、キングストン、ウインザー、ノヴァスコシアなどもその発祥地として名乗りを上げている。
今日行われるような屋内でのアイスホッケーのルーツは19世紀、カナダでフィールドホッケーを氷上で行った遊びにあるとされている(モントリオール市の公報には、1875年3月3日に初の屋内試合が行われたとの記録がある)。
1877年には、マギル大学の学生であった、ジェームス・クライトン、ヘンリー・ジョセフ、リチャード・F・スミス、W.F.ロバートソン、W.L.マリー、フランク・パトリック、レスター・パトリックらが、乱雑であった試合に意味を持たせるためラグビーなどのルールを参考にして7つのルールを整備し、地方紙上で発表した[2]。ルール整備によってゲームが洗練されると、アイスホッケーの人気は高まり1883年にはモントリオールの冬祭り(Winter Carnival)の行事に組み込まれるようになった。
この前後からアイスホッケーはカナダ各地で実施されるようになり、1887年にはオンタリオ州でアイスホッケーのリーグ戦も開催された。さらに1896年にはアメリカでも公式戦が開催され、1897年にはカナダ・モントリオールで現在のルールが制定されるなど、アイスホッケーは北米を代表するウィンタースポーツとしての地位を確立した。
1888年に時のカナダ総督スタンレー卿は、この冬祭りを見物した折にこの競技に感銘を受けて、ベストチームに優勝杯を贈ろうと考えたとする説がある(もっとも、彼の妻や子供達の方がこの競技に熱心であったという説も有力である。)。これが今もNHLの優勝チームに授与されるスタンレー・カップの起源とされる。なお、スタンレー卿の子供が本国のイギリスにアイスホッケーに関する知見を持ち帰って、そこからヨーロッパにこの競技が広がったといわれる。
世界初のプロ選手によるリーグ戦ナショナルホッケーリーグ(NHL)は1917年度からカナダで開始され、以来毎年11月から翌年6月にかけてアメリカ、カナダの各地で氷上の格闘技といわれる激戦の数々を開催してきた。また1997年のシーズン開幕戦は初めての海外興行として日本の東京(代々木第1体育館)で「バンクーバー・カナックス vs マイティーダックス・オブ・アナハイム」の試合が開催された。
オリンピックで初めてアイスホッケー競技が実施されたのは、1920年のアントウェルペン(アントワープ)大会。当時はまだ、冬季オリンピックが実施されておらず、夏季オリンピックで実施された。次の1924年大会から冬季オリンピックが開催されたため、アントワープオリンピックのアイスホッケー競技は、夏季オリンピックで実施された唯一の大会である。
1998年の長野オリンピックからは、プロ選手の出場が認められており、現在でも冬季オリンピックの大会中でもメイン競技のひとつに挙げられている。
ゲームの概要
競技場
試合は、ホッケーリンクと呼ばれる表面に氷を張った専用の競技場で行われる。
リンクには、中央の赤いセンターライン(またはレッドライン)とそれをはさんだ2本の青いブルーライン(またはオフサイドライン)という3本の太い線があり、他にゴールラインという赤の細い線もある。ブルーラインを境界として、敵ゴール側をアタッキングゾーン、味方ゴール側をディフェンディングゾーン、中間をニュートラルゾーンという。 フェイスオフ・スポットは、リンク中央の他に、オフサイドライン手前、アタッキングゾーン、ディフェンディングゾーンでそれぞれ左右に設けられ、全部で9箇所ある。オフサイド、アイシング・ザ・パック、センターラインパスの判定は、この線を基準に行われる。なお、専用リンクの外周はボードと言われるフェンス状の囲いで覆われており、このボードをパックが越えない限りアウトオブバウンズとはならないので、プレーをいたずらに中断させることがなく、またボードの反発を利用したパスを行うことも可能である。
アイスホッケーにおいては、ゴールの裏側においてもプレイ可能であり、他の競技にはない大きな特徴となっている。攻防の要衝となる非常に重要なエリアである。
プレーヤーの人数
氷上に一度に出ることができる選手は、各チーム6名(キーパー1人を含む)までと決められている。その際、選手はスケート靴を着用する。また、危険を伴う競技のため、防具は正しく装着されていなければ出場できない(なお、近代的なアイスホッケーのルールが整備された19世紀後半においては、プレーヤーの人数は当初、各チーム9人であった。1884年にモントリオールでフィギュアスケートの選手からの「あまりホッケーの人数が多いとリンクが傷みやすく危険である」との声を受けて7人に減少し、その後6人となった経緯がある)。
1チームは通常、氷上およびベンチ入りの選手を合わせ、2人のゴールキーパーを含めた18名から23名程度のロスター(登録)選手で構成される場合が多い。控え選手 (Substitute) 、コーチ、監督は、リンクサイドのボックスに入る。運動量が多く疲労がたまりやすいので、攻撃陣、守備陣(ゴールキーパーを除く)は、あらかじめセット・ユニット・ラインと呼ばれる組を編成する。競技の特性から長い時間プレーを連続することが難しいため、40秒から50秒程度で組を随時交代しながら試合を行う。
- 役割
- フォワード (アイスホッケー)
- ディフェンス (アイスホッケー)
- ゴールテンダー(ゴールキーパー)
- エンフォーサー (アイスホッケー)(別名:fighter、tough guy、goon) ‐ 非公式な役割で、反則や乱暴なプレーが起こされる場面に対応・牽制することを求められる。
- キャプテン
- キャプテンは、ユニフォームの左胸(チームによっては右胸)にCのマークを装着する。また、キャプテン代行(オルタネイト<Alternate>キャプテン)はAのマークを装着する。審判の判定に対するクレームは、原則としてキャプテンのみに与えられた権利とされるが、キャプテンが氷上にいない場合にはキャプテン代行がこの権利を代行して行う。NHLにおいてはローテーション制のキャプテン(かつてのミネソタ・ワイルド)、アルタネートキャプテン3人(現在のモントリオール・カナディアンズやトロント・メープルリーフス)も認められている。
ポジション
6人の選手のポジションの構成は、攻撃陣に左右2人のフォワードと守備陣にディフェンス2人、攻撃と守備の両方を行うセンター1名と、重装備に身を固めたゴールキーパー1人という配置が一般的であり、チームが反則を犯すと人数が減り攻撃の可能性が低くなるため、フォワードのポジションを1名ずつ欠いて守備重視にして行く布陣をとる場合が多い。ただし、ゴールキーパーをベンチに下げて、代わりに攻撃用の選手を投入する、エンプティ(6人による攻撃)もルール上認められており、ゲーム終盤に得点で負けているチームが、追撃の可能性を高めるために行うことが多い。
審判員
審判は基本的にレフェリー2名、ラインズパーソン2名の4審で行いこの他にリンク外のゴール真後ろにあるボックスにゴールジャッジが1人ずつ配置され6人でされる。レフェリーとラインズパーソンは黒と白の縦縞のセーターと黒のヘルメットを着用する。レフェリーのみ袖にオレンジの腕章を着用する。基本的にペナルティを取るのはレフェリーの権限である。ベンチの反対側には反則選手を収容するペナルティボックスがあり、ペナルティベンチアテンダントが入口の開閉や反則時間の管理を行う。その中間にはオフィシャルボックスがあり、タイムキーパー・スコアラー・アナウンサーが任に就く。オフィシャルボックスとゴールジャッジボックスは、通常透明なアクリル板などの壁と屋根で密閉されている。これは主に防寒のためである。
選手交代
選手交代は、いつ、何人でも、何回でもかまわない。その際に審判に知らせる必要はない。
プレー中の選手交代は通常相手チームに攻め込まれている時に行うことはなく、パックを確保しているチームが選手交代を行うか否かを実質的に決めることになる。選手交代のプロセスは、パックを確保したチーム側の選手が自陣ゴールキーパーの後ろに陣取りパックを守っている間に、パックを確保した側から選手交代を始め、その選手交代が始まったことを見て相手側も選手交代を始めるのが普通である。なお、選手交代といえどもプレー継続中であるので、油断していたり選手交代に手間取っていたりすると相手側が攻撃してくる可能性があり、互いに相手の動きを監視しながら素早く選手交代を終わらせることとなる。
時計が止まっていればこの制約はなく、選手交代を審判に知らせることで交代完了まで待ってもらえる。 ただしビジターチームはホームチームよりも先に交代を終えなければならない。
反則とペナルティ
反則を犯した選手やチームには反則の重さに準じて以下のペナルティが適用される。複数の反則が同時に起きた場合、一人の選手に複数のペナルティを課したり両チームにペナルティを課すこともある。レフェリーは、反則を犯した選手を退場させ、ベンチから退場となる場合以外は原則としてペナルティボックスに収容する。退場時間は以下の通り。
- マイナーペナルティ 2分 - 普通はこれが適用されるので最も多く見かける。
- ダブルマイナーペナルティ 4分
- メジャーペナルティ 5分 - 2回適用されると自動的にミスコンダクト。
- ミスコンダクトペナルティ 10分 - 代わりの選手を投入できる。2回適用されると自動的にゲームミスコンダクト。
- ゲームミスコンダクトペナルティ 試合終了まで - ベンチからも退場。ただし代わりの選手を投入できる。
- マッチペナルティ 試合終了まで - ベンチからも退場。5分間代わりの選手の投入禁止。公式戦の場合関係当局による処分決定まで出場停止。
ミスコンダクトペナルティやゲームミスコンダクトペナルティ、マッチペナルティの場合同時にマイナーペナルティやメジャーペナルティを課せられることが多い。その場合には別の選手が代わりにペナルティボックスに入る。(代行消化)
ペナルティボックスに入るのは反則を犯した当人だが、ベンチペナルティと呼ばれるチーム全体に課される反則の場合は、ゴールキーパー以外の誰が入ってもよい。また、ゴールキーパーの反則の場合も別の選手が代わりにペナルティボックスに入る。ただしゲームミスコンダクトペナルティ以上の反則の場合はゴールキーパーは退場する。代えのゴールキーパーがいない場合、任意の選手が防具を着替えて(10分間の着替え時間が与えられる)ゴールキーパーを務める。
マイナーペナルティに限り以下のルールがある。
- 失点時に1名ずつペナルティボックスから解放される
- 反則行為があっても審判が警笛を吹く前に相手側が得点した場合はペナルティボックス収容を適用しない
またペナルティが複数課せられた場合でもリンク上でプレイできる選手が3人以下になることはない。もし同一チームが3人以上の退場者を出した場合は、最初に起きたペナルティから順番に消化し最初の1名のペナルティが終わった時点で、未消化のペナルティが適用開始となる。そのためペナルティの状況によってはマイナーペナルティでもペナルティベンチに2分以上入っていることになる。
他にゴール近くで、もしくはシュートモーション中の選手に対してGKが反則により攻撃を妨害した場合(守備側の選手がペナルティとなった場合にも)、ペナルティーショット (PS) になることがある。PSは攻撃側は任意の1選手(キャプテンが指名)、守備側はGK(反則退場していても代理のGKがいない場合は出場可)を残して全員がベンチに引き上げる。センターフェイスオフスポットにパックを置き審判のホイッスルにより攻撃側の選手がゴールにパックを運びシュートを行う。打てるのは1回だけでGKがはじいたパックを打ち直すことは不可。またシュートを打たないままゴールラインを割ったときも失敗となる。ゴールを成功した場合は1点が追加される。試合途中の場合成否に関係なくセンターフェイスオフスポットでのフェイスオフとなる。
ペナルティには多くの種類がありそれぞれに対応した審判のジェスチャーがある。ペナルティの種類ごとに適用される退場時間が設定されているが故意であると判断された場合や相手を負傷させた場合は1ランク上(特に悪質性が高いと判定されれば2ランク以上のことも)の退場時間が適用される。
ペナルティの種類
- ファイティング
- 手を使った戦い。ただし、北米圏における試合においては条件付きで容認されている(後述)
- トリッピング
- 相手の足にスティックのブレードもしくは足を引っ掛ける。
- ダイビング
- トリッピングやフッキングに対するオーバーリアクション(わざと転ぶ)。
- エルボーイング
- 肱をぶつける。チェックの際に当たる体勢によっては適用されやすくなる。
- ニーイング
- 膝をぶつける。
- ホールディング
- 相手の身体、ユニフォームなどをつかんだり(ホールディング・アン・オポーネント)、スティックをつかむ。(ホールディング・ザ・スティック)
- フッキング
- スティックのブレードで相手を引掛ける。
- スラッシング
- スティックで相手選手の体を叩いたり、相手のスティックを強く叩いたりする。実際に当てていなくても相手を怯ませる目的でスティックを振り回しても適用される。乱闘の最中に振り回した場合はゲームアウト。
- ボーディング
- チェックなどにより相手選手をフェンスに叩き付ける。フェンスとの間に挟むようにチェックすると適用されやすい。マイナー及びミスコンダクト・ペナルティが科される。
- ハイスティッキング
- スティックのブレードを肩より高く上げる行為。チェックの際に行うとペナルティになる。相手選手が近くにいないとペナルティにはならないが、高く上げたスティックでパックに触れるとゲームを中断し不利な位置からのフェイスオフとなる。
- バットエンディング
- スティックの端(ブレードのとは反対)をぶつける。正しくスティックを持っている限り発生しない。小児のアイスホッケーではすぐ成長するとの理由から長いスティックを持たせることが多いため発生しやすい。行おうとしただけでもダブルマイナー。実際に行った場合はゲームアウト。
- スピアリング
- スティックのブレードの先で相手プレイヤーを突く。ダブルマイナーペナルティ。
- チャージング
- ジャンプもしくは勢いをつけてチェック。パックを保持していない選手へのチェックはチャージングかインターフェアランスになる。
- クロスチェッキング
- スティックを相手にぶつけるようにチェックする。チェックする際にスティックを相手と反対に向けるようにすれば防げる。
- インターフェアランス
- パックを保持していない選手の動きを妨害する。ゴーリー(ゴールキーパー)を妨害することをゴーリーインターフェアレンスという。
- クリッピング
- 相手の前にスライディングするなどして妨害する。パックを保持している選手に対して行うと適用されやすい。
- チェッキングフロムビハインド
- 背面からのチェック。
- フィフティカフスまたはラッフィング
- 必要以上に強い力で、あるいは非常に荒っぽく相手をチェックする。乱闘の際に相手を殴ったときにも適用される。殴り合いのためグローブを外した場合はミスコンダクト。自発的に殴った場合はマッチペナルティ。最初にそれに加勢した選手にもゲームミスコンダクト。反撃した場合はマイナーペナルティだが乱闘しながらリンク外にでるとミスコンダクト。
- トゥー・メニー・メン
- 6人より多いプレイヤーがリンク上に出ている反則。メンバー交代中に不測の事態が起って混乱すると起こる反則。唯一ラインズパーソンも取ることができるペナルティ。
- アンスポーツマンライクコンダクト
- 相手選手や審判、あるいは観客などに対して、暴言を吐いたりスポーツマンらしからぬ言動をしたときに適用される。口汚い言葉を使った場合はミスコンダクト。ヘイトスピーチを行った場合はゲームミスコンダクト。審判に暴力を振るった場合はマッチペナルティ。
- ディレイ・オブ・ゲーム
- 遅延行為。デフェンディングゾーンからベンチ上以外へのアウトオブバウンズなどがあたる。
- ヘッドバッティング
- 頭突きをする行為。マッチペナルティ。
- キッキング
- 相手を蹴る行為。スケート靴には刃がついているため極めて危険。マッチペナルティ。
パワープレー
反則によるペナルティーボックスでどちらか一方の人数が少ない場合、人数の多いチームの攻撃を一般にパワープレーと言い、大きな得点チャンスとなる。特に相手が2人少ない場合をツー・メン・アドバンテージと呼び、最大の得点チャンスとなる。またこの時、人数の少ないほうのチームの状態をペナルティキリング(キルプレイ)と言い、通常は守備に徹することとなる。以前は、ショートハンドと称したが短腕症を連想させる等の理由でそう呼ばれなくなった。
反則により選手が退場し選手の少ないチームにはアイシングが適用されない。このため、ペナルティを受け不利な状況にあるチームは、防禦と時間稼ぎをかねてパックを敵側に大きく打ち出す作戦が頻繁に用いられる。一方相手と同じ人数なら双方ともアイシングは適用され退場選手がいてもリンク上の選手が多い側のチームにはアイシングを適用する。
パワープレイの間に得点することを「パワープレイゴール」と呼び、パワープレイゴールが多いと勝ちに繋がりやすい。またペナルティキリングの状態であっても攻撃することは可能で、相手のミスなどからカウンター攻撃で得点することが稀にある。以前は「ショートハンドゴール」と呼んだが最近では前述の理由から「キルプレイゴール」などと呼ばれる。
ピリオド終了時
ペナルティによる退場の時間が残ったままピリオドが終了した選手は、インターバルの間はベンチに戻れるが、次のピリオド開始時にはペナルティボックスに戻り、出場までの残り時間はそのまま持ち越す。
得点
ゴールは常に1点、基本的にスティックを使ってパックをゴールに入れることが必要とされるが、自殺点はこれ以外でも認められることもある。パックを直接ゴールに入れるのでなければ、手を使って空中にあるパックを叩き落とすことや、スケート靴でパックを蹴ることも認められている。
試合時間
試合は、正式にはピリオドと呼ばれる20分の単位を計3回行う。各ピリオドの間には、休憩時間として15分のインターミッションがある。インターバルの間には、プレーで荒れたリンクの表面を整備するための整氷車両、通称「ザンボニー」が登場することがある。[注 1]
各ピリオドは、両チームのセンター同士が向き合い、ビジターチーム、ホームチームの順にスティックを 氷面につけた後、審判が落下させるパックをスティックで弾き合うフェイスオフによって開始される。またフェイスオフは、得点、反則などがあった場合は特定のフェイスオフ・スポットで行われるが、稀にフェンスを飛び越えてパックがリンクから出た場合(アウトオブバウンズ)はフェイスオフ・スポット以外で行われる場合もある。さらにゴールキーパーがパックを押さえ込んだり、選手の防具にパックが挟まったりした場合も、フェイスオフを行う。
第3ピリオドが終了して同点の場合は、延長戦に突入する。
延長戦
第3ピリオド終了時で同点の場合に延長戦に入る。延長戦はオーバータイムやエクストラピリオドとも呼ばれる。第3ピリオドとオーバータイムの間にインターミッションはなく(NHLでは1分、アジアリーグやIIHFルールでの試合では3分間ベンチで休憩)、リンクの整備も行わない。
延長戦は基本的に5分間、先に得点を入れたほうが勝ちとなるサドンデス(いわゆるゴールデンゴール(Vゴール)方式)を採用する。アジアリーグのレギュラーリーグではオーバータイムではゴールキーパーを除き3人対3人(俗に言う 3on3)の状態で行う。5分間を終えて両チームとも無得点の場合、規定により引き分け、再延長、ペナルティ・ショット・シュートアウトのいずれかが適用される。
NHLのプレーオフやアジアリーグのプレイオフでは、再延長として15分のインターミッション後に20分の延長ピリオドが行われる。どちらかのチームが得点を入れるまでこれが繰り返される。そのため最初の20分間で決着がつかない場合、第2延長ピリオド、第3延長ピリオドと続くことになる。
ペナルティ・ショット・シュートアウト
延長戦で決着がつかない場合はペナルティ・ショット・シュートアウト(PSS)[注 2]を行い、勝利チームを決める。NHLでは単にシュートアウトとも呼ぶ。PSSは通常のペナルティ・ショットとほぼ同じ要領で、両チーム3回のチャンスが与えられる。3回のチャンスでゴールが決まった数が多い方に得点が1与えられ勝利となる。そのためPSSが行われた試合はPSSでの点差にかかわらず必ず1点差ゲームになる。ペナルティ・ショット・シュートアウトの参加選手、そして順番は各チームの申告で行われる。
3回のチャンスで同じゴール数の場合は1名ずつのサドンデス方式となる。
試合の中断
試合中に防具が破壊された(もしくは外れた)場合や負傷者が出た場合は、危険防止のため直ちに試合を停止する。二次的な危険を防ぐため防具の破片などを全て回収するまで再開はしない。
プレー中にスティックが折れた場合は、手元に残ったささくれだった柄の部分をただちに手離さなくてはならない。危険を回避するためであり、従わない場合はペナルティーとなる。なお、その際、新たなスティックをベンチから手渡される形で使用することが可能である[注 3]。
ジャッジ
得点、反則などが無効になる場合、審判は野球のセーフのような動作を行う。これはウォッシュアウトという。「セーフ」と口に出す場合もある。
ボディコンタクト
相手に体当たりして弾き飛ばすことをチェックという。基本的に、パックを保持している選手に対してのみ行うことが許され(保持している選手が相手を弾き返すのは可)、保持していない選手に行うとペナルティ(後述)になる。肩、上腕および臀部で当たることになっている。肘から下や脚を使うことは認められない。ボードにあまり近い場所で行うとペナルティをとられやすい。
ホームアイスアドバンテージ
他の競技でホームチームが有利な点は地元の声援など間接的な部分のみであるが、アイスホッケーではセット出しやフェイスオフの構えなど、ルールとしてホームチームが有利になっている。これは他の競技には見られない独特なものである。[注 4]
注釈
- ^ 「ザンボニー」とは整氷車販売シェア世界一であるメーカーザンボニー (Zamboni) 社から、製氷車自体を一般名詞化したものである。
- ^ サッカーでいうPK戦。
- ^ 折れたスティックを交換のためにベンチに渡すことは可能
- ^ 一発勝負の試合などではホームアイスアドバンテージを適用しない場合もある。
- ^ なお、アイスホッケー靴によるスピード競技も存在するといわれる。
- ^ 1911年古河電気工業日光事業所の前身日光精銅所がルーツとされる。1925年、古川電工アイスホッケー部として創部。1999年、古川電工アイスホッケー部が廃部。H.C.日光アイスバックスが後継クラブとなり活動を継続。途中運営会社の交代などもありながら、H.C.栃木日光アイスバックスとして活動している。
- ^ 2001年雪印が廃部。クラブチーム化し札幌ポラリスとして発足するも、プロチームとしては1年間で活動終了。現在は市民クラブとして存続している。
- ^ 2003年西武グループの再編に伴いコクドと西武鉄道が合併し西武プリンスラビッツとして活動した。だが、西武グループの業績悪化に伴い2008年を以って廃部となった。
- ^ 2008年、青森県八戸市を本拠地とする東北フリーブレイズが創部
- ^ 王子製紙アイスホッケー部として活動。親会社の名称変更に伴いチーム名に変化はあったが、2008年に王子イーグルスに名称変更。2021年からクラブ化し、レッドイーグルス北海道として活動。
出典
- ^ 氷上の格闘技は本当だった!アイスホッケー衝撃の事実 | SPORTS STORY - NHK
- ^ “アイスホッケーでは、なぜ殴り合いが許されるのか? 驚きの「ファイティング」ルールについて”. VICTORY. 2020年3月8日閲覧。
- ^ “歴史 基礎知識”. 公益財団法人日本アイスホッケー連盟. 2022年2月19日閲覧。
- ^ 日本の男子アイスホッケー、存亡の危機…企業スポンサーは人気のカーリングばかりに - [Business Journal]
- ^ 空手、アイスホッケー、山の診療所。毎日が新たな体験の日々だった。 - 高須克弥記念財団
- ^ “氷上リスク吹き飛ばせ アイスホッケー感染対策 扇風機、空気清浄機に行動監視も”. 北海道新聞 (2021年12月12日). 2022年1月28日閲覧。
- ^ “苫小牧アイスホッケークラスター リンク上は冷気滞留 日ア連、換気対策呼び掛け”. 47NEWS (2021年10月30日). 2022年1月28日閲覧。
- ^ “釧根管内114人コロナ感染 クレインズ関連クラスター165人に”. 北海道新聞 (2022年1月27日). 2022年1月28日閲覧。
- ^ “クレインズ集団感染 アイスホッケー対策苦慮 扇風機配備、消毒…それでも防げず”. 北海道新聞 (2020年1月20日). 2022年1月28日閲覧。
- 1 アイスホッケーとは
- 2 アイスホッケーの概要
- 3 主なルール
- 4 用具
- 5 女子アイスホッケー
- 6 脚注
アイスホッケーと同じ種類の言葉
- アイスホッケーのページへのリンク