とある飛空士への追憶
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/20 04:52 UTC 版)
用語
- 中央海戦争
- 中央海を主戦場として物語開始時点から約半年前に開戦した二国間戦争。天ツ上が優勢であり、サン・マルティリア陥落も現実味を帯びてきたために第八特務艦隊及び海猫作戦の実現に至った。開戦に至った背景や、戦況の推移、終戦に至るまでの経緯はとある飛空士への夜想曲を参照。
- 第八特務艦隊
- カルロ・レヴァームが、レヴァーム皇家が保有する7つの艦隊から飛空戦艦1、重巡空艦3、駆逐艦7を徴用して編成した「花嫁奪還」のための艦隊。
- 天ツ上の哨戒網を潜り抜け10日でサン・マルティリアに到達、ファナと貴族高官を乗艦させ再び10日で帰還するとされていたが、出発したまま消息不明になった。シャルルを含めた騎士団員達は、大瀑布周辺で天ツ上に捕捉され雷撃機などによる反復攻撃を受けて全滅したと予想している。
- 海猫作戦
- 第八特務艦隊によるファナ・デル・モラルの救出が失敗したことを隠しつつファナをレヴァーム皇家に迎えるために立案された作戦。
- シャルル(コードネーム:海猫)の操縦する複座式水上偵察機サンタ・クルス後席にファナを乗せ、単機で中央海の敵哨戒網を突破、レヴァーム本国付近のサイオン島沖で「第八特務艦隊旗艦 エル・バステル」に偽装された同型の艦艇にファナを引渡し、そのまま「艦隊唯一の生き残り」として凱旋する計画。口止め料として、砂金による破格の報酬が海猫には与えられる。
- ベスタド
- 天ツ人とレヴァーム人の混血児のこと。双方が敵対していることもあり、天ツ人・レヴァーム人の両方から迫害されている。
- デル・モラル空艇騎士団
- ディエゴ・デル・モラルの私設軍隊。実態は傭兵の寄せ集めであり、平時は商船の護衛を務める。開戦後はレヴァーム空軍の下部組織に編入され、作戦時には囮として利用され、レヴァーム正規兵から見下されている。粗野な連中の集まりであるが、互いの出自は気にせず、シャルルも一員として受け入れられている。
- 聖アルディスタ
- アルディスタという聖人の名前ではなく、神格名。本作では「アルディスタ正教会」という一教会、一教団の名でしか登場しなかったが、『とある飛空士への恋歌』で作品世界の創造神(であると信じられている)のことであることが明かされた。
- 『恋歌』第3巻によると、遥かな古代に天翔ける船に乗り、訪れた島、大陸に自らの血肉と言語、子孫へ語り継ぐべき教えの種子、「聖アルディスタの種子」をばら撒いたと伝えられる。その種子より生まれた人々は同じ知識・言語・道徳により育つため、身体特徴・技術発展・文化・言語体系などが酷似しているという。
- 水素電池
- 産業革命を経たあと、「第2の産業革命」と呼ばれたほどの発明であり、「錬金術師」が発明したという。エネルギーを消費することなく海水を酸素と水素に分解できる触媒を内蔵し、蓄電・発電の双方が可能である。このため、フロート装備の水上機であれば事実上ほぼ無制限の航続力を得ることが出来る。レヴァームと天ツ上の両国に於いてあらゆる飛行機械の動力源として用いられ、主役機である「サンタ・クルス」もこれを動力源としている。ただ、水素電池が発生させた電気で稼働する発動機はモーターではなく「エンジン[注釈 15]」である。第1作の国々と第2作以降の国々は互いに存在すら知らないのだが、水素電池をはじめ、「飛空機」「飛空戦艦」「揚力装置」といった用語、メカニズムも同じものが用いられている。
- オーバーブースト
- 燃料の水素ガスを空気中の酸素と急速に反応させることで大電力を発生させ、一時的な高速飛行を可能にする操作。作中ではシャルルが何度か使用している。
- 劇場版ではスロットルレバーを最大まで押し込むことで作動し、作動中はモーター回転数が上昇するほか、排気管から青白い排気炎と白煙を噴出するという描写がなされている。
- 揚力装置
- 飛空戦艦等の空飛ぶ船が飛行に使用する装置。水素電池によって駆動するが、それ以上の詳細な原理や構造は作中では語られていない。主翼で揚力を獲得する飛空機には装備されておらず、飛空艦艇に特有の装備品である。
- イスマエル・ターン
- 上方への斜め宙返りの頂点で半ロールを打ち、揚力・推力・重力が釣り合う一点を利用し行うと表現される特殊な空戦機動。「空間に真空を現出させる」「無重力状態のような不思議な機動」とも表現されている。
- 1回の旋回で自機を追尾する敵機の背後を取れるが、高Gがかかるためパイロットや機体に高い負担を強いる。操作を誤るとブラックアウト、失神、失速、機体の空中分解に繋がる危険な技。エースパイロットでもこの機動を行える者は極めて少なく、作中ではシャルルと千々石の2人しか使えない。天ツ上では「左捻り込み」の名で知られる。「とある飛空士への誓約」ではカルステン・ターンという名で登場。
- 坂井三郎が用いたとされる空戦機動の「左捻り込み」をモチーフとした架空の機動である。本来の左捻り込みはプロペラの後流やカウンタートルク、及びジャイロモーメントを利用しているため、推進式の機体や二重反転プロペラ機には不可能であるが、イスマエル・ターンにはそのような制約は存在しない[18]。
- とある飛空士への追憶
- 本作のタイトルにもなっているノンフィクション小説(作中作)。劇場版には登場しない。中央海戦争の終戦から数十年後、海猫作戦に関する機密文書を発見したノンフィクション作家が5年の調査の後に出版し、レヴァーム・天ツ上の両国でベストセラーとなった。
- 5年間の調査の中で、当時まだ存命であった波佐見真一へのインタビューが行われ、空戦シーンの描写に活かされている。ファナとシャルルの会話や、休息のために立ち寄ったシエラ・カディス群島での様子など、本来はファナとシャルル以外知りえない場面については、ガガガ文庫版ではノンフィクション作家自身による想像とされている。一方、新装版ではファナの使用人として働いていた人物へのインタビューが行われ、かつてファナが使用人に語っていたという思い出話をもとにそれらの場面が執筆されたことになっている。
- あとがきではアントニオ中佐(新装版ではラモン・タスク中佐)の隠蔽工作によって、海猫作戦後の狩乃シャルルの動向が全く辿れなかったことが記されている。
注釈
- ^ 「飛空士」シリーズは、本作、第2作『とある飛空士への恋歌』、第3作『とある飛空士への夜想曲』、第4作『とある飛空士への誓約』の全4タイトル17巻を指す。
- ^ 劇場版では極秘のはずの作戦内容が酒場で大声で話されている
- ^ 劇場版では空戦の一部が削除されている
- ^ 劇場版ではファナの感情に関する描写含め、心理描写は全て削除されている
- ^ 劇場版では編隊空戦が削除され、千々石は最初から単機で攻撃を仕掛ける。
- ^ 劇場版ではシャルルはファナの名を絶叫しており、ファナの名を口にした意図も描写されていない。
- ^ 劇場版では描写が曖昧で、全てかどうか不明となっている
- ^ 劇場版では作家及び小説に関する描写は削除されている
- ^ 劇場版では感情の剥落に関する描写は削除されている
- ^ 劇場版では「長い髪が邪魔だった」という理由に変更され、髪を切るシーンは削除されている
- ^ ファナに母の近況を聞かれたシャルルは「病気で苦しまずに亡くなった」と嘘をついている。なお、劇場版ではシャルルが嘘をついたと分かる描写がない。
- ^ ガガガ文庫版では大瀑布手前での話となっている。
- ^ 物語終盤ではいつのまにか「連装」になっており2挺になっている。
- ^ 劇場版では2泊3日。
- ^ 第1作物語後半、第2作以降は「水素電池スタック」「DCモーター」という名で記されるようになり、「エンジン」という記述はされなくなる。
- ^ 海猫作戦後のファナの動向が映像ではなく文章で表示されたのみ
- ^ 同じくトムス・エンタテインメントによる『とある飛空士への恋歌』のTVアニメ版制作では、それらの反省点が踏まえられている。
出典
- ^ 『SFが読みたい! 2009年版』早川書房、2009年2月、96頁。ISBN 978-4-15-209001-0。
- ^ “シリーズ累計発行部数”. ラノベニュースオンライン 2022年12月8日閲覧。
- ^ 犬村小六『レヴィアタンの恋人III』小学館〈ガガガ文庫〉、2008年1月、243頁頁。ISBN 978-4-09-451046-1。
- ^ “Amazon.co.jpメッセージ”. Amazon.co.jp. 2008年5月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年9月7日閲覧。
- ^ a b 石井ぜんじ / 太田祥暉 / 松浦恵介『ライトノベルの新・潮流 黎明期→2021』スタンダーズ、2022年1月1日、77頁。ISBN 978-4-86636-536-7。
- ^ “応援してくださる皆さんへ「ありがとう!!」”. ガガガ文庫:ガガガ編集部ログ. 小学館 (2008年8月18日). 2008年9月7日閲覧。
- ^ 『このライトノベルがすごい!』編集部『このライトノベルがすごい! 2009』宝島社、2008年12月、18、26頁頁。ISBN 978-4-7966-6695-4。
- ^ まんたんブロード編集部「2008年売上ベスト3はこれだ!」『新世紀エンタメ白書2009』、毎日新聞社、2009年1月、16頁、ISBN 978-4-620-79330-6。
- ^ 「ガ報」No.0016、2008年8月19日発売のガガガ文庫折り込み。
- ^ “『とある飛空士への追憶』ラジオドラマ化、決定!”. ガガガ文庫:ガガガ編集部ログ. 小学館 (2009年4月24日). 2009年4月30日閲覧。
- ^ “ラジオドラマ化作品、ついに決定〜〜!!”. 銀河に吠えろ!宇宙GメンTAKUYA. ニッポン放送 (2009年4月23日). 2009年4月30日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k “とある飛空士への追憶”. メディア芸術データベース. 2023年5月29日閲覧。
- ^ 『とある飛空士への恋歌』第5巻 pp.167-173 2011年1月23日 初版
- ^ 『とある飛空士への恋歌』第5巻 p127 2011年1月23日 初版
- ^ 「とある飛空士への夜想曲」および新装版「追憶」では特務中尉。
- ^ 『とある飛空士への恋歌』第5巻 p128,p211等 2011年1月23日 初版
- ^ ゲッサン2019年6月号 別冊 p.55
- ^ 犬村小六 (2011年5月18日). “「左捻り込み」は零戦の特殊機動ですが、原作は面白さを最優先してますのでプッシャでもできることにしてます…”. Twitter. 2019年7月25日閲覧。
- ^ “とある飛空士への追憶”. 小学館. 2022年10月2日閲覧。
- ^ “小学館「ガガガ文庫」がオーディオブック市場へ参入!”. 小学館コミック (2019年4月12日). 2019年7月7日閲覧。
- ^ “とある飛空士への追憶 1(漫画)”. 小学館. 2022年10月2日閲覧。
- ^ “とある飛空士への追憶 2(漫画)”. 小学館. 2022年10月2日閲覧。
- ^ “とある飛空士への追憶 3(漫画)”. 小学館. 2022年10月2日閲覧。
- ^ “とある飛空士への追憶 4(漫画)”. 小学館. 2022年10月2日閲覧。
- ^ “自分のキャラ、こわしていく 「とある飛空士への追憶」 神木隆之介が声優で参加”. MSN産経ニュース (産経デジタル). (2011年9月26日). オリジナルの2011年9月26日時点におけるアーカイブ。
- ^ “サンドウィッチマン : 富澤が声優初挑戦 伊達は王子様コスプレ アニメ「とある飛行士への追憶」”. まんたんウェブ. 毎日新聞デジタル (2011年10月1日). 2012年7月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年10月2日閲覧。
- ^ a b c d e f g 『別冊オトナアニメ アニメになったラノベ美少女大図鑑』洋泉社、2011年7月10日発行、73頁、ISBN 978-4-86248-755-1
- ^ a b c d e “とある飛空士への追憶”. アニメハック. 2023年5月29日閲覧。
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