衝撃的な勢いで広がる、米OpenAIの対話型AI(人工知能)チャットツール「ChatGPT(チャットGPT)」。本連載では、ChatGPTに加え、画像を生成する「Midjourney(ミッドジャーニー)」など、生成AI(ジェネレーティブAI)がどのように生活を変え、マーケティングに影響を及ぼすのか、生成AI領域のアドバイザリーを行う梶谷氏が解説している。第2回は、ChatGPTなどの力を最大限に引き出す「プロンプトエンジニア」という新たな職業の胎動と限界に触れつつ、AI時代の必須スキルについて分析していく。

筆者がMidjourneyの有料プランで生成した画像
筆者がMidjourneyの有料プランで生成した画像

 米OpenAIの「ChatGPT」や米Googleの「Bard」などの対話型AI、同OpenAIの「GPT4」や米Anthropic(アンスロピック)の「Claude(クロード) 」などのLLM(大規模言語モデル)が発展している。そんな中で、高度なプロンプト(編集部注:指示をする文字列のこと)を作成できる「プロンプトエンジニア」という職業が新たな人気職業として誕生する、という主張をよく目にする。

 例えば、OpenAIの競合でLLMや対話型AIを開発するAnthropicは、プロンプトエンジニアを「年収2300万~4500万円+株式」で募集をしている。しかも、Computer Scienceの学位は必要ない。

Anthropicの採用募集サイトから
Anthropicの採用募集サイトから
▼関連リンク(クリックで別サイトへ) Anthropic - Prompt Engineer and Librarian

 海外の多くのメディアでも、新たな職業としてのプロンプトエンジニアに注目した記事が多く出ている。

▼関連記事(クリックで別サイトへ) How to Get a Six-Figure Job as an AI Prompt EngineerSome of these jobs can even pay up to $335,000 a year.

 このように、プロンプトエンジニアという職業がいっときのデータサイエンティスト並みか、それ以上の人気職種として語られている。しかし、私はプロンプトエンジニアという職業は短期的には生まれるかもしれないが、3~5年後以降はほとんど存在しない職業になると考えている。つまり、プロンプトエンジニアという夢のような職業は文字通り幻想だ、ということだ。

 そう考える理由は3つある。

「プロンプトエンジニア」という職業が“幻想”である3つの理由

理由(1):そもそも対話型AIの進化によって特別な記法は必要なくなる

 現状、ChatGPTにデータテーブルの作成など、複雑な処理をさせようと思うと、マークダウン形式(編集部注:デジタル文書を記述するための言語の一つで、比較的簡単に文章構造を明示できる)やSQL(編集部注:データベースを制御するための言語)などの記法を組み合わせて指示することが多い。

 しかし、「AIにとって、そうした形式のほうが間違いなく理解してくれやすい」というだけで、別に普通の話し言葉で投げかけても同じようなことはできる。例えば、以下はSQLの“where”などの記法を使いながら、ChatGPTにスタートアップアイデアを表形式で出力してもらったものだ。

筆者がSQLの記法で出力したもの
筆者がSQLの記法で出力したもの

 しかし、同様の処理は話し言葉でも実行できる。

このコンテンツ・機能は有料会員限定です。

52
この記事をいいね!する
この記事を無料で回覧・プレゼントする

『生成AI時代を勝ち抜く事業・組織のつくり方』

『生成AI時代を勝ち抜く事業・組織のつくり方』発刊
生成AI時代のビジネス・サービスづくりの教科書。生成AIをいかに活用して新たな価値を生むか、成功のフレームワークを大公開! OpenAIの対話型AI「ChatGPT」をはじめとした生成AIは、もはや一過性のブームではありません。とはいえ、「使ってみたけれど思ったほど仕事に役立たない」「ビジネスに本当に生かせるのか疑問」など、懐疑的な声もあふれています。本書は、そんな疑いや疑問を払拭するための指南書です。それも、経営層や事業リーダー、サービスづくりに携わる方たちが真に求めている知識やノウハウを提供することを目指した一冊です。ただ単にノウハウを学べるだけでなく、未来予測もふんだんに掲載。「小売」「広告/マーケティング」「ソーシャル」「メディア」「エンタメ」「ゲーム」「教育/学習」など、多様な業界の未来予測は必見です。

書名:『生成AI時代を勝ち抜く事業・組織のつくり方』(日経BP)
著:梶谷健人
定価:定価:1980円(税込み)
総ページ数:304ページ
発売日:2024年2月19日
Amazonで購入する