格安PCボード「Raspberry Pi」(ラズパイ)の主要な販売元だった英RS Components(以下、RS)が、ラズパイの製造・販売から2022年6月末で撤退したことが明らかになった。

サードパーティーの電動ファンを取り付けた「Raspberry Pi 4 Model B」
サードパーティーの電動ファンを取り付けた「Raspberry Pi 4 Model B」
(写真:日経クロステック)
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 これまでラズパイは、RS(製造は関連会社のOKdoが担当)、element14(英Premier Farnellの子会社)、英Raspberry Pi財団の3つの製造元(ブランド)が供給していた。このうち、RS(OKdo)のブランドがなくなり、今後は残り2つのブランドだけになる。

 ただし、ラズパイの日本の一次代理店であるケイエスワイ(KSY)代表取締役の山下慎二氏は、「今回の件はラズパイの生産量全体には特に影響しないだろう」と語る。ラズパイはどのブランドも、ほぼ全量をソニーが委託を受けて生産しているためだ。

 ラズパイは世界での需要が高まっているのに対し、半導体不足などから製造が追いつかず、品薄の状態が続いている。このため、RSにラズパイを発注して出荷を待っていたユーザーは多くいた。ところが、日本法人のアールエスコンポーネンツは2022年8月10日に突然、「2022年7月1日をもってRSが製造ライセンス契約を終了した」とするメールをユーザーに送った。販売も中止となり、既存の注文もキャンセルになった。

 そのメールには、RS以外の製造元もライセンス契約を終了すると書かれており、その情報がSNSで拡散されたことから混乱が生まれた。実際にはこれは事実とは異なり、RS以外の製造元は変わらず生産を続ける。Raspberry Pi財団が電子掲示板で8月11日に表明した。

 日本での販売体制も特に変更はない。日本の一次代理店は、KSYとスイッチサイエンスの2社が継続する。KSYの山下氏によればラズパイの需要は堅調で、円安による値上げの影響もあるものの「KSYでの2022年のラズパイ販売額は、この8月時点で、2021年の1年分を超えている」という。ラズパイの需要に見合うだけの生産量拡大を早く望みたいところだ。

アールエスコンポーネンツのラズパイ販売終了に関するページ(外部リンク): ラズベリーパイ販売終了・キャンセルについて 英Raspberry Pi財団の電子掲示板(外部リンク): Announcement of discontinuation on RS website
■変更履歴
公開当初、「RS以外の製造元もライセンス契約を終了する」ということついて「事実誤認」としていましたが、「財団側から実際にそのような連絡を受けた」とアールエスコンポーネンツから申し入れがあり、「事実誤認で」を「事実とは異なり」に変更しました。本文は修正済みです。[2022/8/19 13:50]