品質データ偽装問題が元トップを個人で在宅起訴する事態に発展した。2018年9月12日、東京地方検察庁が、三菱マテリアル子会社で品質データ偽装を行った三菱電線工業(東京)とダイヤメット(新潟県新潟市)、三菱アルミニウム(東京)の3社を法人として起訴した。容疑は不正競争防止法違反。東京地検は、一連の品質データ偽装問題の端緒となった神戸製鋼所も同容疑で同年7月19日に起訴している。だが、元社長を個人として起訴するのは初めて。在宅起訴されたのは、三菱電線工業元社長の村田博昭氏と、ダイヤメット元社長の安竹睦実氏である。

図●2017年11月に品質データ偽装の発覚で謝罪する三菱マテリアルグループ経営者
[画像のクリックで拡大表示]
図●2017年11月に品質データ偽装の発覚で謝罪する三菱マテリアルグループ経営者
右が三菱電線工業社長の村田氏。右から2番目が当時三菱マテリアル社長の竹内章氏。

 三菱電線工業はシール材、ダイヤメットは自動車用焼結機械部品など、三菱アルミニウムはアルミニウム(Al)合金の圧延製品と押し出し製品で品質データ偽装を行った。いずれも、検査結果が顧客と取り決めた規格(以下、顧客規格)の範囲から外れているにもかかわらず、顧客規格の範囲内にデータを書き換えて顧客に出荷していた。検査において規定外の方法で測定して値を換算したり、未実施にもかかわらず実施したことにしたりして顧客に納入したケースもある。

 三菱マテリアルグループは上記3社に加えて、本社である三菱マテリアルと三菱伸銅(東京)、立花金属工業(大阪市)の合計6社が品質データ偽装に手を染めていた。このうちなぜ3社だけが起訴されたのか、またなぜ2社の元トップだけが在宅起訴され、三菱アルミニウム前社長は起訴されていないのかについては、「起訴状を見ていないので分からない」と三菱マテリアルの広報は説明する。今後は裁判手続きに入る。

 村田氏と安竹氏は、共に品質データ偽装の事実が発覚した当時の社長。同じく品質データ偽装が発覚した時点で三菱アルミニウムの社長を務めていた濱地昭男氏は、同月12日に引責辞任した。

 元トップとはいえ、個人が在宅起訴される厳しい事態になった理由について、三菱マテリアル広報部は「報告書の内容が影響したのではないか」とみる。報告書には、トップが品質データ偽装の決定に関与したという主旨の記述があるという。

 なお、品質データ偽装の対象となった製品(品質データ偽装品)の安全性は、ダイヤメットを除く子会社4社については基本的に顧客の確認が済んでいるという。ダイヤメットの製品については安全確認を継続中だ。また、三菱マテリアルでは、社外の有識者で構成する「銅スラグ骨材安全性検証委員会」が品質に問題がないことを確認し、国土交通省と経済産業省、関係するJIS認証機関に報告したと、同社が同年8月1日に発表している。