東京五輪を前に、街の要と言える3施設が開業した。「渋谷スクランブルスクエア」は駅の乗降客を周辺へ受け流す交差点、「渋谷フクラス」はバスや物流の拠点、「渋谷パルコ」は坂上に人を呼ぶ“集客装置”としてそれぞれ役割を担う。変貌を遂げる渋谷は、老朽化が進む主要都市の1つの道しるべとなる。

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 2019年秋に3施設が開業し、活気に沸く渋谷。いずれの建物も高層部のオフィスフロアにはIT企業の入居が決定した。さらに3施設とも頂部には、激変する街並みを俯瞰(ふかん)できる屋外展望スペースを設け、新しい都市の楽しみ方を示した。

 20年は東京五輪開催のため一部工事が止まるものの、その後、渋谷駅桜丘口地区やスクランブルスクエア第2期の開発などが本格化し、街の更新はいよいよ大詰めを迎える。

 街の変革は、01年に地下鉄13号線(現・東京メトロ副都心線)が都市計画決定されたことが契機となった〔図1〕。05年、駅周辺が都市再生緊急整備地域に指定された。区は07年にまちづくりガイドラインを発表。それを具現化する検討会を設置し、後の「デザイン会議」発足に至る〔図2〕。

〔図1〕街を変えた副都心線の決定
年月 行政や事業者の主な動き
2001年5月 地下鉄13号線(現・東京メトロ副都心線)が都市計画決定
05年12月 都市再生緊急整備地域の指定
07年3月 「渋谷駅街区基盤整備検討委員会」を渋谷区が設置
07年9月 「渋谷駅中心地区まちづくりガイドライン2007」を発表
08年6月 東京メトロ副都心線の開業
「渋谷駅街区基盤整備方針」を発表
09年6月 渋谷駅中心地区まちづくり検討会を設置
渋谷駅街区基盤整備都市計画決定・変更
11年3月 「渋谷駅中心地区まちづくり指針2010」を発表
 →指針に基づきデザイン会議を設置
11年12月 アジアヘッドクォーター特区の指定
12年1月 特定都市再生緊急整備地域の指定
12年4月 「渋谷ヒカリエ」開業
12年10月 「渋谷駅中心地区基盤整備方針」を公表
13年3月 東急東横線の地下化
14年6月 渋谷駅中心地区基盤整備方針を発表
15年6月 「渋谷駅中心地区基盤整備 都市計画」概要を発表
16年3月 「渋谷駅周辺まちづくりビジョン」を発表
地下鉄13号線の都市計画決定を契機に駅周辺の開発が始動。2007年ガイドラインや11年指針などで方向性を定めていった(資料:渋谷区の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
〔図2〕インフラとデザインが並走する会議組織
〔図2〕インフラとデザインが並走する会議組織
渋谷駅周辺に関しては、基盤整備などを話し合う調整部会などと連携する形でデザイン会議が存在する(資料:渋谷区の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 デザイン会議の座長を務めた内藤廣氏は、駅周辺の街区で縦動線を可視化する「アーバン・コア」や、「デザインアーキテクト」と呼ぶ設計者をそれぞれ置くことなどを提案した。

 これまで発表してきた開発計画は、大型施設が次々と完成を迎えることで輪郭を表しつつある。その効果に、更新時期が迫る新宿や池袋など他の街も注目を寄せる。