大阪 富田林などで運行の「金剛バス」 路線バス事業廃止へ

大阪・富田林市など4つの市町村を中心に路線バスを運行する「金剛バス」について、運営会社は運転手不足などを理由に、ことし12月に路線バス事業を廃止することになりました。
自治体側は、代わりとなるバス会社を探すなど、路線の維持に向けた対応策を検討するとしています。

路線バス事業を廃止するのは、富田林市に本社がある「金剛自動車」です。
この会社は、現在、「金剛バス」として、▼富田林市のほか、▼太子町、▼河南町、▼千早赤阪村の4つの市町村を中心に14の路線を運行していますが、運転手不足や利用者の減少を理由に、ことし12月20日で路線バス事業を廃止することになりました。
富田林市などによりますと、運営会社がはじめに自治体側に事業の廃止についての方針を伝えたのはことし5月で、自治体側は、補助金などで経営を支援するという考えを伝えたものの、会社側の方針は変わらず、今月(9月)8日、正式に廃止の方針を伝えてきたということです。
金剛バスの路線は、駅や役場などと各地域をつなぐ役割を担っていて、平日では1日400人ほどが利用する路線もあるということで、自治体側は、路線が廃止されれば、通勤や通学に影響が出るとしています。
このため自治体側は、今後、代わりとなるバス事業者を探すとともに、協議会を立ち上げて路線の維持に向けた対応策を検討するとしています。

【金剛バス“慎重に検討も廃止”】
「金剛バス」を運営する金剛自動車は、会社のホームページで路線バス事業の廃止を明らかにしました。
この中で会社では、「乗務員の不足や売り上げの低下などさまざまな要因もあり、あらゆる可能性も慎重に検討しましたが、ことし12月20日をもってバス事業を廃止することを決定しました」としています。
そのうえで、「ことし12月21日以降の運行に関しましては、各市町村の法定協議会などで協議してもらえるよう、依頼しております。皆さまには大変ご迷惑をおかけしますが、何とぞご理解をいただけますようお願いします」とコメントしています。

【地元では驚きの声】
金剛自動車の路線バス事業が、ことし12月で廃止されることについて、地元では驚きの声が聞かれました。
大阪・河南町の80代の女性は「若い時から50年くらいバスを使っていて、今も、通院のために週3回くらい乗っています。若い人は車を使うようになっていますが、バスがなくなることは考えたこともありませんでした」と話していました。
また、同じく河南町の80代の女性は「買い物や銀行に行く時にバスをよく使っているので、12月までの運行と聞いて驚いています。最近は貸し切り状態のようにお客さんが少なくなっていましたが、バスがなくなったら、これからどうすればいいのでしょうか」と困惑した様子で話していました。
富田林市に住む女子大学生も「通学やアルバイトで、親の送り迎えがない時や雨が降った時に使っていたので廃止になればとても不便です」と話していました。
一方、富田林市に住む50代の女性は「バスだと停留所からの移動もあるのでふだんは使いませんが、移動を考えるとやっぱり車のほうが楽です」と話していました。

【富田林市“代わりの手段確保急ぐ”】
金剛自動車による路線バス事業の廃止について、富田林市道路交通課の北田寛人 課長がNHKのインタビューに応じました。
この中で、北田課長は「コロナ禍の前から経営が悪化していたようだが、運転手不足も加わってバス事業の廃止を決めたと説明を受けた。自治体から財政的な支援を申し出たが、運転手不足などについては実態として支援は難しかった」と述べました。
そのうえで、「『金剛バス』は通勤や通学などで欠かせない交通手段となっており、地域住民に大きな影響がある。国や府、近隣の自治体としっかり連携して地域の足を守れるよう、協力して取り組んでいきたい」と述べ、近隣の自治体などと代わりとなる移動手段の確保に向けた協議を急ぐ考えを示しました。

【大阪知事“バックアップしたい”】
大阪府の吉村知事は、記者団に対し、金剛自動車による路線バス事業の廃止について、「地元住民の皆さんにとって、重要な足になる路線バスだと聞いている。大阪府としても、国とも協力しながら、関係自治体のバックアップをしていきたい」と述べました。

【タクシー事業も6月に廃止】
金剛自動車は運営していたタクシー事業もことし6月に廃止していて、地元の自治体には会社自体も廃業する方向だと伝えているということです。
路線バス事業について自治体側が代わりとなる事業者を見つけられるかが、当面の焦点になりそうです。