人気脚本家として、1990年代から話題作、問題作をヒットさせてきた。とくに「高校教師」(93年)はゴールデンタイムでありながら、教師(真田広之)と生徒(桜井幸子)の純愛、レイプ、近親相姦などショッキングなテーマに挑み、世間に衝撃を与えた。
「ヒロインを演じた桜井は、現場では誰とも口をきかず、群れない。好感度を気にするタレントとは別の次元に生き、そんなストイックな部分が作品に品格を与えてくれました。彼女が(2009年に)突然引退したのは作家としては痛いですが、過去の作品をレジェンドにしてくれた。感謝しています」
当時、謎とされたのがラストシーン。列車のシートで寄り添う2人は駆け落ちをほうふつさせた。ずっと気になっていたが真相は?
「生きているのか、死んでしまったのか。当然、僕の中には結論がありますよ。正直言うと、いろんな見方をされるとは予想していなかった。ただ、正解は視聴者の判断に委ねたい。見方を限定したくないんです」
野島作品は、常に社会に一石を投じてきた。一昨年、脚本監修に携わったドラマ「明日、ママがいない」も、赤ちゃんポストに預けられた少女(芦田愛菜)を主人公に、三上博史演じる施設長の過激なセリフなどが物議を醸した。
「近年、コンプライアンスなどで表現への締め付けが厳しい。セリフが過激でも、三上をキャスティングした段階で、最終的に悪い人であるわけがないという想像力が働いてほしい。今は、最初からいい人はいい人、悪い人は悪い人として描かないとならず、悪く見えて実はいい人だった、というカタルシス(精神の浄化)が作りづらい。エンタメの見方が成熟していないんです」