第70回カンヌ国際映画祭で、エキュメニカル賞を受賞した河瀬直美監督の「光」(公開中)に出演している俳優、藤竜也(75)。今年のカンヌはクラシック部門で、藤の代表作の「愛のコリーダ」(76年、大島渚監督)も上映された。カンヌで藤を直撃した。
「愛のコリーダ」は、公開当時、藤が実際に性行為をしているとして話題に。「製作会見の直前に依頼され、『即答もなんだから…』とプロデューサーの若松孝二さんと新宿ゴールデン街に行き、そこで出演を決めました」と振り返る。
出演を決めたのは「ストーリーがピュアで良かった」から。「あの時、断っていたら自分自身に負けた。一生、後悔しただろう」
カンヌでの上映について「あまりの人気に上映回数が増えたそう。好きな人がいて、嫌いな人がいる。それが『愛のコリーダ』の長生きの秘訣」と語る。
カンヌ滞在中、昔と変わらぬ街並みの海岸通りを歩くと、女性にサインを求められた。だが、差し出された写真を見ると「(映画監督の)黒沢清さんでした。似ているんですかね」と苦笑する。
「光」は上映後、10分間もスタンディング・オベーションが起きた。「初号(最初の上映)を見た時から、こみ上げてくるものがあったが、外国の方が感動してくれたことに感動した」と語る。
話題のドラマ「やすらぎの郷」でもモテ男を演じている藤。「光」で監督と主演俳優を演じた劇中映画「その砂の行方」でも、妻役の神野三鈴とラブシーンを演じている。さすがの熟年ラブシーンだ。 (カンヌ=小張アキコ)