「筋肉をつける最強食材」と、テレビ番組で紹介されたことがきっかけで昨年、ブームとなったカニカマ。新型コロナウイルスの影響で内食が注目される中、スケトウダラのすり身と卵白といったタンパク質たっぷり・低脂肪の食材、話題性で拡大を続けている。
市場を牽引するのが、カニカマのパイオニア、スギヨ(石川県七尾市)の看板商品「香り箱」である。「コウバコガニ(メスのズワイガニ)の一番美味しい時期の一番重い、一番太い脚の茹でたてすぐを再現することにこだわった」と、開発本部長の野田實さんは言う。
カニカマの歴史は、1972年発売「かにあし」に始まる。中華食材のクラゲの代替品作りに魚肉を使って取り組んでいる中で偶然、失敗作がカニの風味に似ていることに気づいたのがきっかけだった。カニの身に似た刻んだタイプだ。「かにのようでかにでない」とCMを打ち、大ヒット。続いてスティックタイプが他社から発売され、百花繚乱。2019年の市場規模は、約600~700憶円に成長している。
海外でも人気で、世界一の消費国はフランス。カニカマのことを「スリミ(Surimi)」と呼び、そのまま食べたり、キッシュに入れたりする。
香り箱は、他社との差別化を図るため、本物を超えることを目指し開発が始まった。まず、コウバコガニの身を分析。食感、香りや旨みの成分、繊維の形状などを細かくデータ化した。「カニは1本わずか1ミリにも満たない細い筋肉繊維でありながら、ジューシーでぷりぷりとした食感を持っていることがわかり、これを魚肉のすり身でどう作り出すかがポイントになった」と、野田氏は説明する。