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ＴＢＳや日本テレビなど在京の民放キー局と、米大手「Ｎｅｔｆｌｉｘ」（ネットフリックス）やＡｍａｚｏｎプライム・ビデオなど海外の有料動画配信サービスが、連携を強めている。先行する韓国などのソフト戦略も参考に、海外市場進出の足がかりにしたい局側と、日本の映像作品を強化したい配信側の思惑が一致。オリジナル番組の共同制作も進めるなど、勢いが加速している。（文化部 川床弥生、道下航）
新作投入のＴＢＳ、日テレは２４か国に３０作品
ＴＢＳは、放送中の連続ドラマ「日本沈没―希望のひと―」など新作３本をネットフリックスで、今夏放送した「ＴＯＫＹＯ ＭＥＲ」を「Ｄｉｓｎｅｙ＋」（ディズニープラス）でそれぞれ配信すると発表した。佐々木卓社長は、「リスクもある話だと思うが、世界に向けて発信し、評価されるにはチャレンジが必要。海外市場を意識したコンテンツ（番組）もつくっていく」と意気込みを語った。
民放キー局の動画配信サービスは、主に各局の自社制作番組を無料配信する「ＴＶｅｒ」ほか、有料配信で日本テレビの「Ｈｕｌｕ」、テレビ朝日の「TELASA」、ＴＢＳとテレビ東京の「Ｐａｒａｖｉ」、フジテレビの「フジテレビオンデマンド」がある。
対するネットフリックスは世界１９０か国以上で映像を配信し、Ａｍａｚｏｎプライム・ビデオも会員数が世界で２億人以上と、スケールは桁違いに大きい。
民放キー局では、フジテレビが２０１５年に上陸したネットフリックスにいち早くドラマなどを配信した。フジはＡｍａｚｏｎプライム・ビデオにアニメ「ノイタミナ」シリーズを配信するなど、海外市場には先駆的に番組を投入してきた。
また、日本テレビは１０月から、ネットフリックスでアジア２４か国（日本・中国除く）に、ドラマやバラエティーなど３０作品の配信を始めた。日テレの杉山美邦社長は、１１月の定例記者会見で「海外市場は我々にとっても開拓すべき大きなマーケット」と述べた。番組制作においても、海外からの資金が入れば、良質な番組を制作・配信できる可能性も広がる。
配信側は国内市場拡大も視野
一方の配信側は海外に限らず、国内での市場拡大も視野に入れている。昨年の国内の定額制動画配信の市場規模は３２３８億円（推計値、ＧＥＭパートナーズ調べ）で前年比８４６億円増。コロナ禍で利用者も増加傾向にある。
放送前の番組の先行独占配信に力を入れるＡｍａｚｏｎプライム・ビデオは、「テレビ局は長年培った知見から日本の視聴者が見たい作品を制作している。新作を見たい視聴者が多い分、先行配信はニーズに応えられる」と説明する。
オリジナル配信番組の共同制作の動きも活発だ。ネットフリックスは来年配信予定のドラマで、篠原涼子主演で不倫愛を描く「金魚妻」をフジテレビと、漫画原作の社会派コメディー「ヒヤマケンタロウの妊娠」をテレビ東京と、それぞれ共同で企画・制作する。
ネットフリックスの広報担当は「日本は他国と比較しても原作が豊富で、映像作品の原石が多い。民放各局との連携は、エンターテインメントの裾野を広げ、視聴者に愛されるメディアが共存できる道を開く」としている。
海外戦略担う新会社の設立も
ＴＢＳホールディングスは１１月、海外戦略を担当する新たな子会社を、来年３月から本格稼働させると発表した。映像作品の企画開発や海外市場参入などに取り組む“頭脳”が集まる組織だ。地上波と世界配信の作品は撮影機器や制作方法などが異なってくる。渡辺真二郎・ＤＸ戦略部長は、「韓国ドラマの成功も１０～２０年越しで、一朝一夕ではない。ＴＢＳが頑張ってやってみせる」と力を込める。
