「やぶ医者」実は名医のブランドだった…地に落ちた名声の理由、常識覆す語源説

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 落語などでも有名な「やぶ医者」。風が吹くと やぶ が揺れ、風邪が 流行はや ると、評判のよくない医者にも患者が押し寄せるとの 洒落しゃれ から「薮」、呪術を用いる「野巫」、田舎者を指す「野夫」……。どれも「やぶ」と読むが発祥には諸説が入り乱れ、まさに<薮の中>。多くは腕の悪い医者の代名詞だが、その“常識”を覆す語源説が兵庫県 養父(やぶ) 市に伝わるという。はたして真相は……。(小坂渉)

語源の地

 養父市で6月、今年で8回目となる「やぶ医者大賞」の受賞者が決まった。いずれもへき地などで人々に寄り添いながら奮闘する北海道と滋賀の医師2人だ。

 大賞は、市が地域医療の担い手をたたえようと創設。ただ、その命名は思いつきのだじゃれではない。「やぶ医者」とは名医を指し、その語源の地が養父との説に由来するという。

俳文集に記載

 「根拠は、これです」

「風俗文選」を手にする谷本さん
「風俗文選」を手にする谷本さん

 市教委文化財専門員の谷本進さんが見せてくれたのが「風俗 文選もんぜん 」。江戸中期に俳人・松尾芭蕉の門弟・森川許六(1656~1715年)が編さんした俳文集だ。

 「世にやぶ医者と呼ばれるのは……」で始まる一節に登場するのが、「但州養父」(現在の養父市)に隠れ住む「良医」。いまわの際の病人をたびたび回復させ、教えを請う者は全国に広がったと。まさに名医の〈ブランド〉だったのだ。

 その名声が、なぜ地に落ちたのか。

 「弟子と名乗って、おざなりな治療で金儲けに走る者が続出したためです」と谷本さん。不届き者のせいで「腕の悪い医者」に転じてしまったというわけだ。

 ともあれ、その名医説こそが、古里をこよなく愛する養父市民にとって“常識”に近い。ただ、かつて、養父に本物の名医がいたことは、あまり知られていない。

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2420023 0 エンタメ・文化 2021/10/05 14:27:00 2021/10/05 15:40:54 2021/10/05 15:40:54 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/10/20211004-OYT1I50056-T-e1633413665931.jpg?type=thumbnail

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