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2020.03.10

伊藤美誠が語る 丁寧戦11-0のラブゲーム断行の理由

伊藤美誠 PHOTO:@ITTFWorld

卓球の今季ワールドツアー3戦目「カタールオープン」<3月3~8日/ドーハ>は、日本女子のエースである伊藤美誠(スターツ・世界ランク3位)が水谷隼(木下グループ・同15位)とのミックスダブルスで今季ツアー初優勝。女子シングルスでは世界ランク1位の陳夢(中国)に決勝で敗れ準優勝だったものの、準決勝でリオ五輪金メダリストの丁寧(同6位)にストレート勝ちという頼もしい活躍を見せた。

【試合映像】まさかのラブゲーム!? カタールOP 女子シングルス準決勝 伊藤美誠vs丁寧

 特に第3ゲームのラブゲームは度肝を抜いた。出足に得意のサーブからの3球目攻撃でスマッシュを決めると、2本目のサーブでもレシーブミスを誘い、そこから怒とうの連続ポイント。10-0のゲームポイントも相手に1ポイントを献上することなく、3球目攻撃でスマッシュを叩き込み、このゲームを奪った。

丁寧 PHOTO:@ITTFWorld

 卓球競技には相手選手の完封負けを避けるという世界共通の認識がある。ルールではなく「マナー」なので、破ってもペナルティーを課されることはないが、過去にはたとえ故意でなくとも、このマナーに抵触して批判される事例もあった。他競技には見られない卓球トリビアだ。

 しかし、今回、伊藤は思い切ってラブゲームを断行した。しかも、丁寧を相手にだ。その時の心境を本人はこう説明する。

「前までは1点ミスして、1点あげるっていうのがあったんですけど、世界選手権(世界卓球2019ハンガリー)の劉詩ブン選手と陳夢選手の決勝戦を見て、劉詩ブン選手は『お互いにこの試合に懸けてやっているんだから、そういうのをするのが逆に失礼だ』というふうに言っていたので、それを思い出しました。

あの世界選手権以降、(相手選手に)失礼のないよう、ちゃんと戦おうと思いましたし、今回、丁寧選手と試合をした時にも、1点取らせてあげてとかじゃなくて、しっかり自分のプレーをしようと心がけました」

 世界卓球2019ハンガリーで優勝した世界女王の劉詩ブン(同5位)、そして、伊藤の考え方はルールを遵守しながら、相手選手を尊敬し公正に戦うスポーツマンシップに則っていると言えるだろう。卓球界をリードするトップ選手の言動により、卓球競技における完封回避の習慣は今後、急速に消えていくのかもしれない。

(文=高樹ミナ)

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