「社会の役に立つ仕事がしたい」。人生最後の職場に阿佐海岸鉄道を選んだ。百貨店や福祉施設で勤めた経験を基に、「地域住民の足」の生き残りにかける。

 拓殖大卒業後、1979年に東急百貨店に入社。東急グループ内企業の統合や顧客情報の管理を主に担当した。グループの主力事業である百貨店や鉄道を多くの人に利用してもらうため、会員カードの特典を増やすなどさまざまなプロジェクトにも関わった。

 「新たなチャレンジを続けたい」と、49歳で百貨店を退社。知人に紹介された横浜市などの老人ホームで計12年間支配人を務めた。年収は半減したが「収入じゃなく、何の仕事をしているかを大事にしたかった」。

 今年3月、再び新たな挑戦への意欲が湧いた。転職サイトで偶然、阿佐海岸鉄道の求人情報を見つけ、すぐに応募書類をそろえた。徳島との縁はなかったが、鉄道経営という未知の世界に引かれ、移住を決めた。

 開業以来赤字が続く同社の業績を回復するのは至難の業だ。鉄道を利用した観光ツアーや、車内イベントを充実させれば課題解決の糸口が見つかると考えている。「鉄道と一緒に、沿線地域も盛り上げたい」と意気込む。

 5月に会社近くの空き家を借り、妻と住み始めた。自然豊かな海や川は、いつ見ても飽きない。「いつか趣味のサーフィンもしたいね」と笑みを浮かべた。東京都出身。61歳。