第2のマシソンになれるか――。巨人在籍2年目を迎えるチアゴ・ビエイラ投手(28)が大ブレークの予感を漂わせている。昨季序盤は極度の制球難から大苦戦したが、首脳陣をもうならせる勤勉ぶりで徐々に弱点を克服。ポストシーズンでは日本シリーズ史上最速となる164キロも叩き出した。原辰徳監督(62)も〝超優良助っ人〟スコット・マシソン氏(36)の姿と重ね合わせたほどで、剛腕の今後が注目されている。

 来日1年目は散々なスタートだった。昨春の宮崎キャンプでフリー打撃に初登板した際は、投じた25球のうち20球がボール。打者にとっては打撃練習にならない〝衝撃デビュー〟で、宮本投手チーフコーチも思わず「ストライクゾーンってあるからさ…」とボヤいたほどだった。球速では他を圧倒するが、いかんせん制球が定まらない。一軍初登板した開幕2戦目の6月20日の阪神戦(東京ドーム)でも打者5人に2四球を与え、わずか1試合で二軍降格を命じられた。

 しかし、努力家のビエイラは腐らなかった。ボディービルダーばりに筋骨隆々の肉体に改造し、地道な反復練習も黙々と継続。コーチ陣の助言にも熱心に耳を傾け、日本語も「オツカレサマデシタ」などのあいさつ程度は〝マスター〟した。こうした努力が実を結び、課題だった制球は徐々に安定。9月下旬から日本シリーズまで一軍の戦力として定着した。

 ビエイラのこうした姿勢を評価し、今後に大きな期待を抱いていたのが原監督だった。以前、あのナイスガイの姿とダブらせながら、こう語っていた。

「まだ若いし、途上ですよ。すごく人の話も聞くし、研究熱心。昔のマシソンに非常に似ているよね。前向きだし、マシソンは年々野球が上手になっていった。(マシソンも最初は)クイックもできなければ、何も(できなかった)」

 2012年から19年まで巨人でプレーしたマシソンも、入団当初は制球難に加えてセットポジションやクイックもままならなず、直球だけが速い〝ダメ助っ人〟の典型だった。ところが川口投手コーチらの助言を深く聞き入り、自らも努力を惜しまなかった。そして、不動のセットアッパーとして地位を確立。親日家で仲間やG党からも愛されて築き上げた174ホールドは、外国人選手では歴代最多、NPB史上4位の記録だ。

 マシソンが初来日したのは28歳シーズンで、ビエイラは27歳だった。ノビシロはまだ十分ある。2年目の春季キャンプに向けて20日にはるばるブラジルから来日したビエイラは「今季の目標は日本一。そのためにしっかり準備をしてきました」と力強い言葉を残した。どんな成長曲線を描くのか興味は尽きない。