政治家の資金「二重取り」のズルさ 税金315億円、さらに禁止されたはずの資金源も それでも満足できず裏金か

2023年12月24日 06時00分
 自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件で、企業・団体献金の規制が改めて問われている。政党には、企業や業界との癒着を防ぐために導入された「政党助成金」が支給されている上、政治家が代表を務める政党支部が「抜け穴」となって禁止されたはずの企業・団体献金も流れる。言わば「二重取り」状態が続いてきたところへ今回発覚した裏金事件。政治家のブラックボックスには、いったいいくらのカネが吸い込まれているのか。(浜崎陽介)

◆議員が代表者を務める「政党支部」が一気に増えた理由

 1980年代後半から90年代にかけてリクルート事件、共和汚職、佐川急便事件、ゼネコン汚職などが相次ぎ、企業から政治家への資金提供が問題視された。
 政治改革の目玉の一つとして、非自民の細川連立政権は94年、政党助成法を成立させた。金権腐敗政治と決別するため、政治資金規正法で政治家への企業献金を禁止する代わりに、国民の税金で政党へ活動資金を助成するものだった。
 このとき、5年後に政党への企業献金のあり方についても見直すという付則が付き、99年の政治資金規正法改正で、政治家個人の資金管理団体への企業献金は禁止になった。しかし、政党や政党支部には引き続き献金ができたため、議員が代表者を務める政党支部が一気に増えた。政治家サイドへの企業献金を事実上可能にしたうえ、政党助成金との二重取りとなる「焼け太り」だ。

◆自民に流れる助成金は159億円(2023年)

 政党助成金は毎年、国民1人あたり250円を基準として2023年は総額約315億円が計上され、うち自民党には159億円が配分されている。共産党は制度に反対して受け取っていない。
 企業・団体からの献金はピーク時から大幅に減少したとはいえ、集金力には個人差が大きい。たとえば、安倍派「5人衆」といわれる有力議員の一人、萩生田光一・前政調会長が代表を務める自民党東京都第24選挙区支部は昨年は約1400万円、一昨年は約4600万円の企業・団体献金を受けた。

◆「政治には金がかかる」は自民の勝手な論理?

自民党本部

 こうした政治資金は何に使うのか。自民党のベテラン衆院議員の元秘書は「秘書の人件費や地元の会合の会費などお金がかかるのは確か。当選回数が少ないほど広報にも費用がかかる」と話す。それでも「パーティー券が売れているのに、記載していないのは考えられない」とあきれる。
 政党助成金に詳しい立正大の金子勝名誉教授は「自民党の論理で『政治には金がかかる』『選挙には金がかかる』という言葉を無条件に信じていいのか。私設秘書を雇ったり、買収で金を配る選挙をやるからではないか」と批判する。
 「元々、政党助成金を設定した条件は金権腐敗を克服するためだった。政治の世界では小さな抜け道をつくっておくと悪用されてしまう。これをきっかけに今の問題点を洗い出し、もう一回新しいシステムを考えていくことが一番大切なことだ」と話す。

 政党助成金 受け取るには、政党助成法上の政党要件を満たす必要がある。総額の半分を各政党の議員数、残り半分は得票数に応じて配分される。政治活動の自由を尊重し、使途の制限はない。2023年の交付額は自民党159億1000万円、立憲民主党68億3200万円、日本維新の会33億5100万円、公明党28億6900万円、国民民主党11億7300万円など。23年までの累計支給総額は9000億円を超える。


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