坂本龍一さん「神宮外苑の再開発、見直すべき」と手紙で訴えたが…小池知事「事業者にも送ったら」

2023年3月18日 06時00分

坂本龍一さん=2014年1月撮影

 音楽家の坂本龍一さんが、明治神宮外苑地区の再開発の見直しを求める手紙を東京都の小池百合子知事らに送った。都は再開発事業を許認可する立場にあり、「知事のリーダーシップに期待します」などとつづったが、小池氏は17日の記者会見で「(再開発の意義などが)坂本さんや都民の方に伝わるよう(職員に)情報発信をあらためて指示した」と述べ、取り合わなかった。再開発は3月下旬に神宮第2球場の解体から始まる計画だ。(森本智之、三宅千智)
 外苑再開発は、三井不動産など民間事業者が中心で、小池氏は従来「明治神宮の私有地をめぐる開発の話」(3月3日の会見)と民間開発であることを強調してきた。17日の会見でもこうした姿勢を踏襲したとみられ、「事業者の明治神宮にも手紙を送られた方がいいんじゃないでしょうか」とも述べた。
 だが、都は再開発の内容を承認し、計画実現のため建築規制を大幅に緩和。2月には事業の施行を認可している。開発に反対する人からは小池氏の姿勢には「事業者丸投げ」などと批判がある。
 坂本さんの手紙は3月上旬、小池氏、永岡桂子文部科学相、都倉俊一文化庁長官、吉住健一新宿区長、武井雅昭港区長の5氏へ郵送。「100年かけて守り育ててきた樹々を犠牲にすべきではない」などと訴えた。
 がん闘病中の坂本さんは書面で本紙のインタビューに応じ、反対運動に全面的に参加する体力は残っていないとしながら「あの美しい場所を守るために何もしなかったのでは禍根を残すと思った。後悔しないように手紙を出すことにした」と意図を明らかにした。
 反対理由について、外苑の自然環境が破壊されることを懸念。「樹々は差別なく万人に恩恵をもたらすが、開発は一部の既得権者と富裕層だけに恩恵をもたらす」と問題提起した。その上で、都市の中で自然環境を守ることは可能だとして、パリやローマを例に「都市がそれぞれの歴史とともに長い年月をかけて獲得する風景を維持する」ことを求めた。
 坂本さんは東京出身。新宿高校、東京芸大で学んだ。「生まれ育った東京が美しく魅力的な場所であってほしい」とも述べた。

おすすめ情報

東京ニュースの新着

記事一覧