防衛費や子ども関連費倍増も 財源検討は参院選後に先送り 政府が「骨太方針」閣議決定

2022年6月8日 06時00分
 政府は7日、「骨太方針」を閣議決定した。自民党と岸田文雄首相がそれぞれ目指す防衛費や子ども・子育て関連費用の倍増に道を開く内容だ。ただ、裏付けとなる財源には触れず、検討は22日公示が見込まれる参院選後に先送りされる。国民の痛みが伴う増税や他の予算削減、将来世代につけを回す国債の増発などが想定されるが、有権者は判断材料が不十分 なまま「白紙委任」を迫られる。(川田篤志、柚木まり)

◆安倍元首相が反発 自民内で紛糾

 「当然に防衛費は増やしていかなければならない」(自民党の高市早苗政調会長)
 「防衛費の増額は不可避だ」(公明党の竹内譲政調会長)
 閣議決定に先立ち、骨太方針を了承した7日の与党会合で、2人の政策責任者は口をそろえた。
 例年、大きな混乱なく議論が終わることが多い与党の事前審査は今回、自民党で紛糾した。焦点になったのは防衛費を巡る記述だ。
 政府の原案は「防衛力を抜本的に強化する」ため、必要な予算措置を講じるという表現だった。これに党内最大派閥を率いる安倍晋三元首相が反発。国家安全保障戦略の改定に関する党提言で、欧米の軍事同盟・北大西洋条約機構(NATO)加盟国の目標と同じ対国内総生産(GDP)比2%以上を念頭に、増額を5年以内に実現すると打ち出したことを踏まえ「目安と期限を明記すべきだ」と主張した。党側のとりまとめ役にもかかわらず、安倍氏に近い高市氏も同調した。

◆防衛費は「GNP比2%」を明記

 2回の修正を経て、要求は増額派のほぼ「満額回答」(中堅議員)。防衛力強化は「5年以内」、来年度予算編成上の財政規律への考慮も「重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない」と加筆された。参考としてNATO目標の2%も明記され、防衛省幹部は「強力な後押しになる」と歓迎する。
 対照的に財源に関しては「予算編成過程で検討し、必要な措置を講ずる」の一文のみ。首相は7日の政府会合で増額に重ねて意欲を示し「次は実行だ。参院選後に方針を前に進めるための総合的な方策を具体化する」と強調したが、有権者に判断材料を提供しないことへの言及はなかった。

◆子ども「支援充実」も財源は「広く検討」

 子ども政策では、首相が今国会で「将来的に倍増したい」と表明。対GDP比1.73%(2019年度)にとどまる支出を、英国など欧州諸国並みの3%以上まで引き上げることが念頭にある。骨太方針に数値目標は掲げなかったが、出産育児一時金の増額をはじめ、結婚、妊娠・出産、子育ての各段階の支援充実を図ると記載した。
 財源に関しては「国民各層の理解を得ながら、社会全体での費用負担の在り方を含め幅広く検討」と記すにとどまった。結論を出す時期にも触れていない。
 今の予算で子ども関連費用に充てられているのは消費税だが、国民に増税を理解してもらうのは容易でなく、首相は10年程度の税率引き上げを否定している。骨太方針でも「消費税分以外も含め、適切に財源を確保する」と脚注をつけ、選択肢から事実上排除した。
 財源が見つからず、国債に頼るようなら、しわ寄せは将来にわたって子どもたちに及ぶことになる。

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