中学教科書検定 主体的な学び手厚く 検定意見、集団的自衛権に6件

2020年3月25日 02時00分
 文部科学省は二十四日、来春から使われる中学校教科書の検定結果を発表した。九年ぶりに改定された新学習指導要領を反映する初の検定で、子どもたち自身による「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」を意識した構成が目立つ。集団的自衛権に関する記述では、行使の三要件を書くよう求める検定意見が複数の教科書に付いた。 (柏崎智子)
 今回の検定では、十教科で百十五点の申請があった。三点が不合格、五点が途中で取り下げ、百六点が合格、再申請後の合格が一点あった。検定意見は計四千七百七十五件付いた。
 新学習指導要領は、北方領土に加えて竹島と尖閣諸島も「固有の領土」と初めて明記した。
 これを受け、地理と公民のすべてと歴史の多くの教科書が北方領土と竹島、尖閣諸島を「固有の領土」と記述。ただ、現行教科書も、検定前に学習指導要領の意図を説明する「解説書」が先取りして改定されたため、記述は大幅に増えていた。今回の記述の分量は現行とほとんど変わらず、付いた検定意見もわずかだった。
 一方、二〇一四年に政府が解釈を変え、一五年の安保関連法の成立で行使が可能になった集団的自衛権の記述では、歴史で二件、公民で四件の検定意見が付いた。政府が行使に必要として示した新三要件をすべて書き込むよう求める意見が目立った。
 新学習指導要領は、学習内容のみならず、生徒同士や教師、地域の人などと対話しながら考えを深めるなど「アクティブ・ラーニング」に向けた授業改善も指示しているのが特徴。合格した教科書では、赤穂浪士の討ち入りを忠義として許すべきか厳罰に処すべきか意見を交換する(歴史)、合意形成する過程を詳しく載せる(国語)-など、各教科で工夫が見られた。
 今回の教科書検定では、一六年度に変更された検定ルールによる初の不合格が出た。
 以前は高校を除き教科書検定では、多くの検定意見が付いていったん不合格となっても再申請すれば合格が可能だったが、変更後は(1)百ページあたり百二十件以上の検定意見が付いた場合(2)基本的な構成に重大な欠陥があった場合-などは年度内の再申請を認めず、「一発不合格」となった。
 「自由社」の歴史と「イスペット」の技術が(1)、令和書籍の歴史が(2)に初めて該当。自由社は不合格となり、反論書を提出したが認められなかった。

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