神保町シアター

S35('60)／大映京都／白黒／シネスコ／1時間30分

■監督：田中徳三■原作：長谷川伸『疵高倉』■脚本：八尋不二■撮影：本多省三■音楽：伊福部昭■美術：内藤昭■出演：長谷川一夫、香川京子、小林勝彦、河津清三郎、弓恵子、多々良純、清水元

この年の日本映画監督協会新人賞を受賞した田中徳三の代表作。親友の高倉と東郷は、会津藩のお家断絶を巡る口論の末、決闘に至る。生き残った高倉は、東郷の弟に仇として狙われ…。苦悶する長谷川が想いを寄せる香川が美しくも哀しい。大雨の決闘が壮絶な凄まじさ。

＊16mm上映

S36('61)／大映京都／白黒／シネスコ／1時間20分

■監督：田中徳三■原作：長谷川伸■脚本：犬塚稔■撮影：武田千吉郎■音楽：斎藤一郎■美術：太田誠一■出演：市川雷蔵、中村玉緒、成田純一郎、大辻伺郎、石黒達也、安部徹、名和宏、香川良介

戦前から何度も映画化された長谷川伸原作の股旅時代劇。秘めた恋の末に、女にも友にも裏切られ、失意の旅に出た銀平が下田に舞い戻ってみると…。旅烏の光と影を雷蔵が名演。愛と友情の悲しみを滲ませる田中徳三の手腕が見事な傑作。玉緒の好演も特筆もの。

S37('62)／大映京都／白黒／シネスコ／1時間18分

■監督：田中徳三■原作：吉川英治『大岡越前』■脚本：新藤兼人■撮影：本田平三■音楽：鈴木静一■美術：加藤茂■出演：長谷川一夫、勝新太郎、中村玉緒、月丘夢路、丹阿弥谷津子、林成年、安部徹

大岡越前守は江戸市中で悪事を働く怪盗一味を捕えるが、その中には若き日の恋人とその子供がいた。長谷川一夫が苦悩する越前守を演じた、隠れた秀作。恋人役の月丘夢路も女の情念を濃やかに演じ切る。新藤の無駄のない脚本と、田中の大胆で繊細な演出が秀逸。

S37('62)／大映京都／カラー／シネスコ／1時間13分

■監督：田中徳三■脚本：八尋不二、浅井昭三郎■撮影：武田千吉郎■音楽：斎藤一郎■美術：西岡善信■出演：市川雷蔵、高千穂ひづる、高野通子、万里昌代、天知茂、加藤嘉、浜村純

北辰一刀流の祖、剣客･千葉周作の青年時代を描く。周作は剣を極めようと江戸の浅利道場へ入門するが、兄弟子を斬って破門になり、諸国遍歴の旅に出る。同年の『斬る』に続き、雷蔵が狂気のごとく剣に憑かれた男を演じる。雷蔵を仇と狙う天知との死闘が圧巻。

S38('63)／大映京都／カラー／シネスコ／1時間25分

■監督：田中徳三■原作：岡本綺堂『番町皿屋敷 お菊と播磨』■脚本：八尋不二■撮影：牧浦地志■音楽：伊福部昭■美術：西岡善信■出演：市川雷蔵、藤由紀子、城健三郎(若山富三郎)、成田純一郎、中村豊、柳永二郎、細川ちか子、加藤嘉

雷蔵の代表作の一本で、田中徳三の名を映画史に刻む名作。徳川泰平の世、幕府に抗う騒乱が次々と起こる中、旗本･青山播磨(雷蔵)は腰元･お菊(藤)との身分違いの愛に燃えていた…。「番町皿屋敷」を基にした悲劇を格調高く描く。死をもって愛を貫く雷蔵が印象深い。

S39('64)／大映京都／カラー／シネスコ／1時間33分

■監督：田中徳三■原作：大佛次郎■脚本：八尋不二■撮影：木浦義明■音楽：伊福部昭■美術：内藤昭■出演：勝新太郎、藤由紀子、藤巻潤、城健三朗(若山富三郎)、田村正和、丸井太郎、五味龍太郎、島田竜三

戦国時代の槍の豪傑･後藤又兵衛の生涯を描いた時代小説を再映画化。君主･黒田長政に背いて、自らの信念を貫いた又兵衛は浪々の旅に出る。豪放磊落な又兵衛に扮する勝新のまっすぐな演技が光る。時代劇の醍醐味を満喫できる合戦シーンなど見所たっぷり。

S40('65)／大映京都／カラー／シネスコ／1時間27分

■監督：田中徳三■原作：大藪春彦「掟破り」(『孤剣』所収)■脚本：野上竜雄、高岩肇■撮影：宮川一夫■音楽：塚原晢夫■美術：西岡善信■出演：市川雷蔵、小林千登勢、春川ますみ、南原宏治、須賀不二男、水原浩一、山形勲

鉱山景気に沸く宿場町に現れた浪人は、町にはびこる悪党の抗争に巻き込まれるが…。雷蔵が革袴姿で手裏剣を飛ばす、西部劇を想起させる異色のハードボイルド時代劇。大映京都の技術陣の遊び心が際立つ爽快な一作で、宮川一夫の陰影に富んだ撮影も素晴らしい。

S44('69)／大映京都／カラー／シネスコ／1時間23分

■監督：田中徳三■脚本：浅井昭三郎■撮影：今井ひろし■音楽：渡辺宙明■美術：太田誠一■出演：本郷功次郎、小林直美、亀井光代、戸浦六宏、毛利郁子、上野山功一、川崎あかね

佐賀･鍋島藩主の私欲で殺された兄妹の怨念が奇怪な出来事を引き起こす。大映末期の作品ながら大映京都の底力が漲る、手抜きなしの正統派怪奇時代劇。『化け猫御用だ』でデビューした田中徳三の、大映最後の作品が、またも化け猫映画となったことは興味深い。

S29('54)／大映京都／白黒／スタンダード／1時間26分

■監督：三隅研次■原作：林不忘■脚本：衣笠貞之助■撮影：牧田行正■音楽：服部正■美術：上里義三■出演：大河内伝次郎、高峰三枝子、三田登喜子、坂東好太郎、柳永二郎、杉山昌三九、高堂国典

師匠･衣笠貞之助の脚本を得た三隅研次の初監督作で、大映版「丹下左膳」の第三作。おなじみ、百万両の在り処を秘めた壺を巡る争奪戦。三隅は時代劇の華麗な躍動感を駆使して描き、新しい生命を吹き込んだ。大河内にとって最後の左膳となった作品。

＊16mm上映

S34('59)／大映京都／白黒／シネスコ／1時間27分

■監督：三隅研次■脚本：八尋不二■撮影：武田千吉郎■音楽：鈴木静一■美術：太田誠一■出演：市川雷蔵、鶴見丈二、左幸子、中村玉緒、弓恵子、阿井美千子、河津清三郎

父の仇を追い、悪党と闘う美剣士(鶴見)の活躍を描く痛快娯楽作。雷蔵は、美剣士の危機を救う神出鬼没の謎の男･千羽鶴の半次郎を颯爽と演じ、女盗人･左幸子も新鮮な色香を放っている。時代劇を知りつくした三隅のシャープな演出と娯楽精神が存分に楽しめる一本。

S35('60)／大映東京／カラー／シネスコ／1時間26分

■監督：三隅研次■原作：西条八十『女妖記』■脚本：長谷川公之、鈴村耕■撮影：中川芳久■音楽：奥村一■美術：間野重雄■出演：山本富士子、野添ひとみ、叶順子、船越英二、高松英郎、八潮悠子、南左斗子、杉田康、清水将夫、永井智雄、丸山修、中条静夫

人気作家(船越)が出会った三人の女をオムニバス形式で綴る。三隅が大映東京で手掛けた最初の作品で、山本、野添、叶の三女優の持ち味を生かしながら、男女の出会いと別れを絶妙に描く。三隅は本作のみならず『女系家族』など現代劇でも力量を縦横に発揮した。

S37('62)／大映京都／カラー／シネスコ／1時間11分

■監督：三隅研次■原作：柴田錬三郎■脚本：新藤兼人■撮影：本多省三■音楽：斎藤一郎■美術：内藤昭■出演：市川雷蔵、藤村志保、渚まゆみ、万里昌代、天知茂、成田純一郎、柳永二郎、浅野進治郎

自らの出生の秘密を知り、流浪の旅に出た天才剣士がたどる数奇な運命――。雷蔵の凄絶な名演に息をのむ、大映時代劇の最高峰の一本で、雷蔵･三隅コンビの代表作。女優たちの迫真の演技、大映京都の技術陣の総力が71分に凝縮され、三隅美学の極致として結晶した一作。

S40('65)／大映京都／カラー／シネスコ／1時間23分

■監督：三隅研次■原作：柴田錬三郎■脚本：星川清司■撮影：森田富士郎■音楽：斎藤一郎■美術：内藤昭■出演：市川雷蔵、中村玉緒、姿美千子、中原早苗、西村晃、島田竜三、水原浩一、小桜純子、安部徹

武家の未亡人の仇討を助けた狂四郎が海賊の財宝をめぐる陰謀に巻き込まれる、人気シリーズ第5作。さらに磨きがかかった雷蔵･眠狂四郎のニヒルさに引き込まれる。玉緒の妖艶な悪女ぶりが見事で、女優の魅力を際立たせる三隅の卓抜な手腕に感嘆する。

S40('65)／大映京都／カラー／シネスコ／1時間36分

■監督：三隅研次■原作：岩下俊作『富島松五郎伝』■脚本：伊丹万作■撮影：牧浦地志■音楽：伊福部昭■美術：下石坂成典■出演：勝新太郎、有馬稲子、宇津井健、宮口精二、大辻伺郎、五味龍太郎、遠藤辰雄、北龍二、安部徹

映画史に残る名作のリメイクで、本作が4度目の映画化。粗野だが心優しい小倉の人力車夫"無法松"は、思いがけず陸軍大尉の未亡人と一人息子の面倒をみることに…。勝新が阪妻や三船に負けぬ熱演で涙を誘い、未亡人役･有馬の清楚な美しさにも魅了される。

S43('68)／大映京都／カラー／シネスコ／1時間21分

■監督：三隅研次■原作：長谷川伸『関の弥太っぺ』■脚本：安藤日出男、杉浦久■撮影：今井ひろし■音楽：小杉太一郎■美術：内藤昭■出演：本郷功次郎、長門勇、高田美和、赤座美代子、安部徹、長谷川待子、長岡輝子、五味龍太郎、毛利郁子

股旅物の名作「関の弥太っぺ」戦後5度目の映画化。撮影開始後に当初主演だった雷蔵が病に倒れ、本郷が代役をつとめて完成した。渡世人･弥太郎の義理人情と、旅先で出会う人々との触れ合いを軽妙に生き生きと描いている。本郷と長門の絶妙の掛け合いが面白い。

S46('71)／大映京都／カラー／シネスコ／1時間24分

■監督：三隅研次■原作・脚本：丸根賛太郎■撮影：牧浦地志■音楽：鏑木創■美術：内藤昭■出演：勝新太郎、大谷直子、中谷一郎、岸田森、藤原釜足、田武謙三、美川陽一郎、田子ノ浦忠雄、大川修

阪妻主演の傑作人情時代劇をリメイク。大井川の川越人足･寅八は、拾った赤ん坊を育てることになるが…。突如親となったお人好しの男を、勝が繊細に好演。大映倒産直前の、三隅の最後の大映作品だが、それを感じさせない時代劇の大らかな愉しさに溢れた快作。