山梨県内の本栖湖で生息が確認されたレイクトラウト(山梨県提供)

レイクトラウトが生息する中禅寺湖と本栖湖

山梨県内の本栖湖で生息が確認されたレイクトラウト(山梨県提供) レイクトラウトが生息する中禅寺湖と本栖湖

 国内で栃木県の奥日光・中禅寺湖にだけ生息するとされてきた大型外来魚「レイクトラウト」が、山梨県内にある富士五湖の一つ本栖湖で確認されたことが26日までに、栃木県と山梨県への取材で分かった。両県は何者かが意図的に中禅寺湖から密放流したとみている。中禅寺湖では4月1日に釣りシーズンが始まるが、レイクトラウトを生きたまま持ち出すことは禁止されており、県や地元漁協はルール順守を求めている。

 レイクトラウトは北米原産のイワナの仲間。雑食性で寿命は20~25年と長く、体長1メートルを超える個体もいる。中禅寺湖には水産庁が1966年に試験放流し、定着した。釣り人気が高い魚種とされる。

 一方、米国では別のサケ類を駆逐する事例もあり、国内では産業利用できるが野生で生息域が広がると生態系に悪影響を及ぼす恐れがある「産業管理外来種」に指定されている。

 山梨県によると、昨年11月16日に釣り人が本栖湖で成魚1匹を釣った。体長81・3センチ、重さ5・6キロで産卵を終えたメスだった。

 食害を懸念し、同県は県内へのレイクトラウトの持ち込みや、釣った場合の再放流を禁止した。網による駆除に乗り出し、3月上旬までに計28匹を捕獲した。各個体の体長はまばらで、同県水産技術センターによると「湖で自然繁殖している可能性も否定できない」という。

 中禅寺湖のレイクトラウトは、東京電力福島第1原発事故に由来する放射性物質汚染の影響で2012年以降持ち出しが一切禁止されてきた。

 体内の汚染濃度が減衰したため4月から規制が全面解除される予定だったが、本栖湖での確認を受け、本県の漁業関係者でつくる県内水面漁場管理委員会は対応を協議。死んだレイクトラウトの持ち出しは認める一方、密放流を防ぐため生きた状態での持ち出しは当面禁止することを決めた。

 違反した場合は、漁業法に基づき1年以下の懲役か50万円以下の罰金が科せられる。県と漁協はホームページなどを通じて規制内容を周知している。

 県農村振興課は「レイクトラウトが他の水域に定着すると、生態系への悪影響が大きい。不審な行動や人物を目撃したら、漁協や県に通報してほしい」と呼びかけている。