■1月22日 大相撲初場所は貴景勝、琴勝峰が3敗で並んだまま、22日の千秋楽を迎える。第一人者不在を象徴する4場所連続平幕Vか、大関の意地か。いずれにしても混戦を〝演出〟したのは貴景勝。11日目からの2連敗で先が見えない賜杯争いとなった。
上位の者に近づく数字を残せば「背中が見える」。目指せば「背中を追う」。励ましを受ければ「背中を押される」。〝背〟を使った慣用句を拝借すれば、貴景勝の場合、その背中は「目を背けたくなる」か。血行を促進させることで筋肉痛を緩和する効果などがあるとされる「カッピング」の治療痕。先場所ほどではないにしろ、今場所も8日目過ぎに見られた。
かつて貴乃花部屋に所属していたとあって、元横綱の師匠同様、独特の相撲道を貫き、己を律する姿勢がある。ならば弱点をさらけ出した上に、土俵の美に反するとは思わないのか。解説者の舞の海氏は「場所が終わってから治療を…」と苦言を呈した。同感だった。
「相当の成績での優勝」が横綱昇進条件とされていた。連敗で厳しい状況で迎えた13日目の阿武咲との一番も見苦しかった。時間いっぱいからの最後の仕切り。相手が手をつくまで腰をおろさない。そして「待った」。明らかに立ち合いの駆け引き。熱戦だったが、軍配が返る前に興ざめしていた。
大関在位21場所目。早く卒業したい。日本人横綱の誕生を望む声がある。だが、このままでは綱はやってこないと個人的には思う。2日目以降、報道陣に背を向け、言葉を発していない。激しい闘志の一方で、協会を背負って立つ男の雰囲気が漂ってこない。それが貴景勝。応援しているだけに、こちらまで悲しくなってしまう。(稲見誠)