バットをペンに、キャッチャーミットをメモ帳に持ち替えて第二の人生を歩み出した。その人は昨季限りで現役を引退した元広島・白浜裕太氏(37)。球団幹部に赤ヘルひと筋19年の元捕手を中日担当の「先乗りスコアラー」に抜てきした理由を聞いた。
「ずっと、キャッチャー出身のスコアラーがチームに一人はほしいと考えていた。新井監督に捕手目線でいいアドバイスができるのではないかと思っている」
このように語るのは鈴木清明球団本部長(69)。球団は白浜の捕手経験やまじめな人間性を評価しており、スコアラーが適任と判断。1軍担当の吉年滝徳氏(チーム付き)と玉山健太氏(ヤクルト担当)、土生翔平氏(DeNA担当)と岩本貴裕氏(阪神担当)ともに新井監督をサポートする(巨人は各担当が兼務)。
昨年10月に戦力外通告を受け、引退を決断をした白浜氏は11月にスコアラーに転身し、現在はマツダスタジアムで先輩スコアラーから指導を受ける。試合中に投手が投げる球種やコースを専用のパソコンにタイミングよく打ち込む練習やデータの分析や解析などやることは多い。2月の春季キャンプ、オープン戦で経験を積み、春には公式戦デビューとなる。
近年、スポーツ界では弾道測定器「トラックマン」、動作解析システム「ホークアイ」などの登場により、選手のあらゆる動きがデータとして数値化できる。各球団は集めたデータを監督や選手に還元する方法を模索しており、現場とデータ班の橋渡し役を担うスコアラーは重要な存在となっている。
「(カープでは)水本(勝己、現在はオリックスのヘッドコーチ)のようにスタッフ(ブルペン捕手)から指導者になる例もある。頑張ってほしい」と期待する鈴木球団本部長。中日には昨季、10勝15敗とシーズン負け越しを喫しており、今季は雪辱に燃える。逆襲の先頭に立つ白浜のカバンには重要な情報と希望が詰まっている。(柏村翔)