安全性とスピード感の壁 LINE銀行開業断念、ネット銀は競争激化

みずほフィナンシャルグループ本社とみずほ銀行本店が入るビル=東京都千代田区
みずほフィナンシャルグループ本社とみずほ銀行本店が入るビル=東京都千代田区

みずほフィナンシャルグループ(FG)とLINEは30日、共同で設立を目指していたインターネット銀行「LINE Bank(バンク)」の開業を断念したと発表した。安全かつ利便性の高いサービス提供が見通せなくなったためとしている。近年、銀行を取り巻く顧客獲得競争は激化する一方、金融システムの安全性への懸念は高まっており、サービス提供のスピード感との両立が課題となっている。

両社は平成30年に、それぞれ傘下のみずほ銀行とLINEフィナンシャルが共同出資し、新銀行を開業すると発表した。スマートフォン上で全ての銀行サービスが利用できることを強みとうたったが、システム開発が難航。当初目指した令和2年度中の開業を、4年度中に延期していた。

開業発表から4年以上が経過する間、銀行間の顧客獲得競争は加速した。キャッシュレス決済の普及などにより、ネット銀行が急成長。楽天銀行は口座数を2倍近くに伸ばして1300万口座に到達したほか、今月29日には住信SBIネット銀行がネット銀行として初の株式上場を果たした。

一方、サービス提供のスピードを重視するあまり、システムの安全性が保たれなかったケースもある。2年にはNTTドコモの電子決済サービス「ドコモ口座」で不正に現金が引き出される事件が発生し、社会問題化した。みずほFGらは、ハイレベルな競争の中で安全な取引を行えるサービスを提供するには、時間やコストがかかりすぎると判断した形だ。

SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「利便性を高めることと、身元確認の厳重化など安全性を高めることは相反するが、不正取引などを防止するためには取り組まなければならない」と指摘した。

LINE銀行の開業断念発表 みずほFGとの共同事業

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