「この時代、生き抜いて」 石井竜也さん、故郷北茨城の新成人へ熱く語る

故郷の成人式で高らかに歌い上げる石井竜也さん=9日、茨城県北茨城市の「あゆみドーム」(三浦馨撮影)
故郷の成人式で高らかに歌い上げる石井竜也さん=9日、茨城県北茨城市の「あゆみドーム」(三浦馨撮影)

9日に開催された茨城県北茨城市の成人式に地元出身の有名アーティスト、石井竜也さん(62)がサプライズゲストとして登場すると聞き、現場に駆け付けた。

昨年は新型コロナウイルスの感染拡大で中止となり、2年ぶりに開催された式典に参加した新成人は平成13年から14年生まれの312人。かつて一世を風靡(ふうび)した「米米CLUB」や「カールスモーキー石井」を知っているのか、と不安だったが、杞憂(きゆう)に終わった。「どうもおめでとう!」。石井さんが羽織はかま姿でさっそうと壇上に現れると、会場は大きな拍手と歓声に包まれた。

石井さんは11年前の東日本大震災で、津波などの大きな被害を受けた故郷の同市を何度も訪問。NHKテレビの番組収録では、母校の市立大津小の児童から震災時の様子を聞き取り、曲をつけた『世界の絆~命にありがとう~』を作り上げ、関係者に披露した。

作品は市内の各小学校にも広まり、この日出席した新成人の一人、会社員の荒川大和さん(20)は「僕も歌ったことがある」と打ち明ける。米米CLUBを知るのは母親の世代だが、震災を小学3年で体験。「あの歌のおかげでがんばれた」という。荒川さんにとっても石井さんは特別な存在だった。

しっとりしたメロディーの『はなひとひら』とアップテンポの『浪漫飛行』。2曲を歌い上げる合間に、石井さんは「ここにいるやつらは津波(震災)もあったし、ここ何年かはこんな生活(コロナ禍)で本当に大変だった。でも、この苦労は40、50になって役に立つ」と熱く語りかけた。

また20代を「人生を作る土台になる」と説き、「楽しむことも大事だが、真剣になる時間もすごく大切。その辺は使い分けられる人間になってほしい」とアドバイス。「世界中が今、つらい思いをしている。(今後)きつい数年になるかもしれないが、この時代を生き抜いてほしい」と出席者を励ました。

「心が、気持ちが動かされた」と荒川さん。石井さんのメッセージは新成人へ確かに伝わったようだ。(三浦馨)

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