第二次世界大戦前の米国共産党の組織や活動を、日本外務省が調査した機密報告書「米国共産党調書」の現代語訳が刊行された。党内の地下組織や秘密工作の実態も詳述され、当時の外務省の高度な情報収集・分析能力がうかがえる。日中戦争勃発後、米国内では反日世論が高まり、対日圧迫外交が続いて日米開戦へと至った。外務省はその裏に、アジア共産化をもくろむソ連に操られた米国共産党の日米対立工作があると分析していた。「調書」は、日本敗戦後のアジアに共産国家が相次いで誕生した歴史の解明にもつながる貴重な公文書だ。
工作対象団体に潜入
「米国共産党調書」(以下、調書)には、数え切れないほどの個人名や団体名がならぶ。公然・非公然の党員、党の団体、そして党が影響力を持った各種外部団体だ。