音声データ、動かぬ証拠 総務省接待問題、局長更迭で答弁回避

 総務省の幹部4人が菅義偉(すが・よしひで)首相の長男が勤める放送事業会社「東北新社」から接待を受けた問題で、同省が19日、秋本芳徳情報流通行政局長ら2人を更迭したのは、NHKの受信料引き下げに向けた放送法改正案などの国会審議を控える中、秋本氏が答弁に立つことを回避する狙いがある。処分は改めて検討するというが、「文春オンライン」が接待時の音声データという動かぬ証拠を公表したことで、懲戒処分は必至の情勢だ。

 「BS、BS、BSの。スター(チャンネル)がスロット(周波数帯域)返して…」。音声データには、昨年12月、秋本氏を接待する菅首相の長男の会話が残されていた。衛星放送の許認可権を持つ総務省は、長男が国家公務員倫理規程で接待を禁じる「利害関係者」に当たる可能性があると認めている。

 長男の発言は、昨年11月に子会社の「スターチャンネル」が、保有するBSチャンネルの帯域の一部を返上したことに関する発言とみられる。BS放送は技術革新により少ない帯域で放送が維持できるようになっており、帯域の再編中。空いた帯域を使い、吉本興業の子会社など3社の新規参入も決まっている。

 長男の発言後には東北新社子会社の社長が、総務政務官在任時に衛星放送業界の新規参入を推進した自民党議員についての発言をしていた。「(自民党の)小林(史明元総務政務官)が悪いんだよ」。それに対し、秋本氏も「うん、そうだよ」と発言している。

 業界関係者は「長男らは新規参入で競争が激化することへの不満をあらわにした上で、競争活性化を進めた小林氏に怒りをぶつけたのではないか」とみる。

 音声データでは秋本氏が同社に便宜を図るような発言は確認できない。ただ、利害関係者と衛星放送の許認可に関わる話をし、さらに同調したともとれる発言をしたこと自体が不適切といえ、徹底した調査が求められそうだ。

 総務省は22日にも調査結果を公表することにしている。

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