韓国総選挙へ政党再編 投票まで2カ月 大統領選「前哨戦」対決も

 ソウルの大統領府で開かれた会議で握手する文在寅大統領(手前左)と尹錫悦検事総長=2019年11月8日(聯合=共同)
 ソウルの大統領府で開かれた会議で握手する文在寅大統領(手前左)と尹錫悦検事総長=2019年11月8日(聯合=共同)

 【ソウル=桜井紀雄】韓国で文在寅(ムン・ジェイン)政権の3年間に審判を下す4月15日の総選挙まで2カ月を切った。ソウルの選挙区では、与野党の首相経験者同士が対決する構図で、次期大統領選の「前哨戦」とも位置付けられる選挙だ。与野党ともに無党派層の取り込みに苦戦する中、最大野党を中心に保守系政党の統合が行われるなど、政党再編の動きが加速している。

 17日、最大野党「自由韓国党」や第3野党「新しい保守党」、少数野党が合併した「未来統合党」が発足した。総選挙で与党「共に民主党」に対抗し、保守票を結集させるのが狙いだ。自由韓国党から横滑りで代表に就いた黄教安(ファン・ギョアン)氏は「統合の勢いで文政権に必ず審判を下そう」と訴えた。

 未来統合党系の議席数は118と与党の129議席に近づく。17日発表の世論調査では、新党に合流する主な党の支持率を合わせると35・9%と、与党の39・9%を射程圏内に収める。

 与野党の激突を象徴するのがソウル中心部の鍾路(チョンノ)選挙区だ。知日派で知られ、災害対応などが評価されて人気のある李洛淵(イ・ナギョン)前首相が与党候補として同区からの出馬を表明すると、朴槿恵(パク・クネ)前政権で首相を務めた黄氏も立候補を宣言した。両氏は次期大統領選の有力候補に挙がるが、ソウル市民を対象にした最近の次期大統領候補の支持率調査では、李氏が32・2%だったのに対し、黄氏が11・7%と大きく水をあけられた。

 与党は文大統領の側近、●(=恵の心を日に)国(チョ・グク)前法相の家族ぐるみの不正事件や経済の低迷などによる中道層の支持離れで順風とはいえない。一方で、最大野党も朴前大統領の弾劾以来のマイナスイメージを払拭し切れず、中道層や無党派層をうまく取り込めていないのが現状だ。

 かつて起業家として若者から支持され、これまでの大統領選で台風の目となってきた安哲秀(アン・チョルス)氏が第三極の結集を目指して新党旗揚げに動いているが、過去の勢いは見られない。南西部の全羅道(チョルラド)が地盤の中道派の3政党も17日に「民主統合党」としての合併を予定していたが、いったん保留になるなど、迷走している。

 韓国総選挙で注目されているのが、最大野党「自由韓国党」(現・未来統合党)からの出馬を表明した北朝鮮の元駐英公使、太永浩(テ・ヨンホ)氏だ。脱北者が比例代表で当選した例はあるが、今回は選挙区からの出馬となる。未来統合党は、文在寅政権の対北政策を厳しく批判してきた太氏を目玉候補に位置付けている。

 韓国紙、朝鮮日報などは17日、太氏のスマートフォンが昨年、北朝鮮とつながりがあるとみられる組織からハッキングされ、保存されていた電話番号や通話記録が盗まれていたと報じた。太氏の身辺の安全についても懸念されている。(ソウル 桜井紀雄)

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