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米国や日本が支援してきた「平和」にただ乗りの文在寅政権 黒田勝弘

 韓国では今、「平和」という言葉があふれている。北朝鮮の核問題解決をめぐる南北首脳会談や米朝首脳会談のためだが、南北首脳会談の際の韓国政府による国際プレスセンターには「平和、新たなはじまり」なるスローガンがいたるところに掲げられ、現在進行中の地方選挙(13日投開票)でも政権与党は「平和」をテーマにしている。

 この「平和」ブームは文在寅(ムン・ジェイン)政権の宣伝とマスコミの便乗キャンペーンのせいだが、文政権としては北朝鮮の非核化を実現し、南北対立が解消することが「平和」というわけだ。

 こんな平和ムードの中では疑問や留保、慎重論は袋だたきにされる。例えば、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議の際、小野寺五典防衛相が過去の例を指摘して状況に慎重論を述べたのに対し、韓国の宋永武(ソン・ヨンム)国防相が対話・和解つまり平和に水を差すものといわんばかりに批判したこともそうだ。

 「北を疑っていては会談(和解)は進まない」というのだが、これでは韓国は北とは疑いを持たず相手の言葉だけを信じて会談しているということになる。実に単純な発想である。

 シンガポールでは北問題を念頭に日米韓3国会談をやっている。3国協力で北の譲歩を導き出すためには逆に日本の疑問や慎重論に感謝すべきだろう。北には気兼ねばかりして嫌がることは何もいえなくなっている韓国だから、日本が代わりに原則論を言い続ける役割分担をやっているのだという、外交的センスが分かっていない。

 今回の日韓論争を伝える韓国マスコミもそうだが、韓国では「非核化実現までは最大限の圧力」を主張する日本は、今や南北和解を妨害する反平和勢力みたいな扱いだ。日ごろ日本批判が大好きで、しかも一方に流れができると異論は排除され「ワーッ」という傾向が強い韓国だから、日本の対北慎重論はたたきがいがある。

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