ISがパルミラ奪還 ロシアに衝撃 地上作戦求める声も

 【モスクワ=黒川信雄】イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)がシリア中部パルミラを再制圧した事態に、ロシアが衝撃を受けている。アサド政権軍を空爆支援し、政権側のパルミラ奪還を実現させたロシアは、現地で名門楽団のコンサートまで開催し、戦果を誇示していたためだ。露国内では再奪還に向け、地上作戦の必要性を指摘する声も出始めた。

 ロイター通信によると、ISは11日にパルミラを制圧した。政権軍は露軍の空爆支援も受け応戦したが、5千人以上とされるIS戦闘員の攻撃を持ちこたえられなかった。

 露軍関係者はインタファクス通信に対し、地上での偵察を担う政権軍がISの戦力結集を見逃した事態を強く批判。ラブロフ露外相は12日、ISの戦闘員がイラク北部モスルから流入していると主張した。

 ISは昨年5月、パルミラを占拠し、世界遺産の遺跡などを破壊。アサド政権軍は露軍の空爆支援を受け、今年3月に奪還した。ロシアは5月、名門のマリインスキー劇場管弦楽団を派遣し、遺跡でコンサートを開催。プーチン大統領が映像で出演者らの労苦をねぎらうパフォーマンスまで見せ、解放の功績を内外にアピールした。

 専門家からは「地上作戦抜きでパルミラを再奪還することは不可能だ」との指摘も出ている。ただ、露政府は、地上作戦への軍の参加は一切検討されていないと強調。地上戦に引き込まれ、紛争に深入りする事態を強く警戒している。

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