獅子文六、静かなブーム 「自由学校」も復刊

『自由学校』(写真中央)
『自由学校』(写真中央)

 『てんやわんや』などで知られる昭和の人気作家、獅子文六(1893~1969年)。ここ数年、長く絶版となっていた作品の復刊が相次ぎ、若い世代を中心に静かな人気を集めている。

 明治生まれの獅子は、フランスで近代演劇を学び、帰国後に岸田國士らと劇団「文学座」を結成。庶民生活を題材にしたウイットとユーモアに富んだ小説も評判を呼び、作品は映画やドラマにもなった。

 筑摩書房が平成25年に復刊したユーモア恋愛小説『コーヒーと恋愛』(ちくま文庫)は17刷、累計6万7千部。読者のリクエストで27年に初文庫化したドタバタコメディー『七時間半』は7刷、3万4千部を発行。このほか、『てんやわんや』『娘と私』『悦ちゃん』も含め復刊5点がいずれも重版がかかる人気ぶりという。

 筑摩書房の窪拓哉さんは「主人公が女優など作品の設定がおしゃれで、会話のテンポも軽快で読みやすい。家族の絆や恋愛といった現在でも関心の高いテーマを扱っており、まったく古さを感じない」と説明。30代の読者が多いという。今年6月には、戦後の新しい価値観を風刺的に描いた代表作『自由学校』も復刊。窪さんは「しっかり者の妻とぐうたら夫が夫婦げんかをきっかけに、妻が外で働き夫が主婦の役割を担うようになる物語。現代社会では珍しくもない現象をいち早く描いているのも魅力」と話す。

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