選挙 夏決戦へ

(上)漂流する非自民 埼玉

 ■相次ぐくら替え、問われる決断

 昨年12月、加須市。来県した岡田克也民主党代表が支援者と握手を交わす横には、平成26年の前回衆院選で次世代の党から出馬した新人、森田俊和(41)の姿があった。

 「私自身、それから民主党県連に関わる者すべてが前を向き、一歩ずつ力強く進んでいきたい」

 2月の同党県連主催「新春の集い」では実行委員長としてあいさつした森田が、民主の埼玉12区(熊谷市など)総支部長になったのは昨年9月だ。元自民党県議だが自民からの国政出馬を果たせず、前回は維新の党からの公募出馬を目指したものの、民主との協力で公認を見送られ、最終的には次世代の党公認で落選。「政党漂流」という残酷な言葉すら思い浮かぶ。

 しかし、民主公認は実力で勝ち取ったともいえる。前回の惜敗率は県内4番目の79・1%で、維新なら比例復活していた。これに目を着けた民主が森田を口説き、元職と公認を差し替えたのだ。

 自民を除名された森田には非自民としての道しかなく、民主入りを断れば別の候補を立てられ、当選がさらに遠のく。

 「国政にかかわるためには手段としての一つの道だった」。森田の本音だ。

                 ■   ■

 「原点の地にやっと戻ってこられた」。維新からおおさか維新の会に移った新人、青柳仁士(37)は、24年の衆院選初挑戦では同4区(和光市など)から、前回は同9区(入間市など)から出馬し、次回に向け再び同4区で挑む。

 前回は維新と民主の候補者調整に伴い、公示直前に空白区だった同9区で白羽の矢が立った。自民候補との票差は前々回の2倍の約5万票に広がったが、「2週間でやれる限り力は尽くした」と青柳。

 「有権者は戻った理由を理解してくれている。不安はない」

                 ■   ■

 現職衆院議員の鈴木義弘(53)=比例北関東=は22日、民主と維新の合流新党「民進党」への参加を決断した。「幅広い考えの議員がいる民進党の中で、保守を貫く。たとえ党内で面倒なやつだと思われたとしても…」。民進と自身の政策に違いがあることは承知の上だ。

 自民県議出身の鈴木は、日本維新の会、維新の党を経て昨年末、仲間4人と改革結集の会を発足。しかし、3人が先に民進党への合流を決めたため空中分解した。同14区(三郷市など)で自民候補に2連敗している鈴木は、比例代表のない無所属では満足に戦うこともままならない。

 決断の前週、衆院議員時代に新進党や民主などに所属した県知事の上田清司(67)は、「保守の二大政党を構築するために力を尽くすべきだ」と鈴木の背中を押した。

 決断させたのは、支援者のこのひと言だった。

 「丸太にしがみついてでも生き残れ。意地を張るな」

                 ■   ■

 対峙(たいじ)する自民県連幹部は「地に足を付けない政治家は、有権者に見透かされるだけだ」と突き放す。

 鈴木も「渡り鳥のように映り、視線が厳しくなることは間違いない」と懸念を隠さない。「だが、」と力を込める。

 「丁寧に説明すれば、なぜこの決断に至ったのかを理解してもらえるはずだ」

 非自民の挑戦者たちの決断が吉と出るか凶と出るか。有権者の判断を仰ぐ衆院解散、総選挙のタイミングについて3人は「近い」と口をそろえ、反転攻勢ののろしを上げている。

                   ◇

 7月10日投開票が有力な参院選、そしてささやかれる衆参同日選。夏に照準を定める立候補予定者と政党の動きを追う。 =敬称略、政党名は当時

会員限定記事会員サービス詳細