経済インサイド

「指定席の切符拝見もうやめます!」 ついにJR東海が東海道新幹線で今春廃止へ 真の狙いはここにあった!

東京駅に入線する東海道新幹線。検札の一部廃止には、多くの狙いが秘められている(大西史朗撮影)
東京駅に入線する東海道新幹線。検札の一部廃止には、多くの狙いが秘められている(大西史朗撮影)

ビジネスマンや旅行客にとっての朗報といえるだろう。JR東海は2016年春のダイヤ改正以降、東海道新幹線のグリーン車と指定席での検札を基本的に廃止する。「切符を出し入れするわずらわしさから解放される」「睡眠を妨げられずにくつろげる」といった乗客の利便性向上はもちろんだが、JR東海の担当者は「ほかのメリットも少なくない」と打ち明ける。1964年の開業以来となる大きな方針転換の背景には、どんな事情があるのか-。

「理不尽」が生じやすい大動脈

まず他社の検札廃止の状況をみてみよう。先行しているのはJR東日本だ。新幹線は2002年9月に全車両で検札を廃止し、翌年以降、常磐線の「ひたち」や中央線の「あずさ」「かいじ」、「成田エクスプレス」といった在来線特急にも広げてきた。

「新幹線や特急に乗務する車掌は、指定席情報が管理できる専用の携帯端末を常備しています」と広報担当者。駅の自動改札化が進み、改札機で読み取った指定席情報を、車掌が持つ携帯端末へと送るシステムが整ったため、いち早く検札の廃止に動いたという。

JR西日本も、山陽新幹線(新大阪-博多)区間だけを走る列車については2007年に検札を廃止しているが、東海道新幹線(東京-新大阪)との直通列車では検札を行っている。今春以降については「JR東海と同じ仕組みに変える方向」(広報)で検討している。

JR東海は今後も、自由席での検札は続ける方針だ。そのワケは、日本の大動脈を行き来するビジネス客の利用が多く、最短3分間隔で発車するという東海道新幹線固有の事情にあるという。

一体どういうことか。

出張族や鉄道ファンなどにはよく知られているルールだが、指定席特急券の持ち主は指定した列車に乗り遅れた際、後から出発する列車の自由席に乗ることができる。「先発する列車」への乗車は想定していないが、事実上黙認している。

JR東海の担当者はこう説明する。

東海道新幹線はビジネス客の利用が多く、列車も頻繁に出ている。そのため、念のため指定席を押さえていた乗客が早く駅に着き、先発する列車の自由席に座るケースが少なくない-。

つまり、自由席が満員で立ち客が出ている大混雑にもかかわらず、同じ列車に「主を失って空気を運ぶ指定席」がいくつもある、そんな理不尽な状態が生じやすい路線なのだ。

新横浜までに検札終了!?

もちろん、そうした状態を防ぐ努力はこれまでも行っている。

検札に回る車掌は、指定席特急券で自由席を利用している乗客を把握した際、元の指定席を返上するよう求め、携帯端末で予約システムに接続して座席指定を解除(返席)している。こうして宙に浮いた元の指定席を、再び別の乗客が利用できる状態に戻している。

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