SBIが新生銀TOB発表 会長に五味元金融庁長官を推薦へ
SBIホールディングスは9日、新生銀行に対してTOB(株式公開買い付け)をかけると発表した。すでに新生銀株の19%超(議決権ベース)を保有しており、約1100億円を投じて最大48%まで出資比率を引き上げることをめざす。新生銀の対応次第では、敵対的TOBにもつれ込む可能性がある。
買い付け期間は9月10日から10月25日まで。TOB価格は1株2000円で、新生銀の9日終値1440円を39%上回る。
新生銀は9日、「(TOBの公表について)SBI ホールディングスより事前の連絡を受けておらず、公開買い付けは当行取締役会の賛同を得て実施されるものではない。当行の意見は、決定次第改めてお知らせする」とのコメントを発表した。
SBIは今後、臨時株主総会の招集を新生銀に要請し、相乗効果を高めるための経営陣刷新を求める。元金融庁長官の五味広文氏を会長候補に、SBIインベストメントの川島克哉社長(SBIHDの最高執行責任者=COO)を社長候補とする方針だ。
2020年1月に株式の取得が明らかになって以来、SBIは「純投資」として断続的に市場で株式を取得してきた。新生銀の時価総額は9日終値で3730億円。SBIは直近の株価に上乗せして買い付け、追加の取得にかかる費用は約1100億円となる。
SBIの北尾吉孝社長はかねて「あらゆる金融サービスを網羅することが大事だ」と話してきた。新生銀は消費者金融や法人融資などSBIにない強みを持っており、関係強化で相乗効果を高める狙いがある。
SBIは全国各地の地銀との資本提携を拡大しており、福島銀行など複数行の主要株主となっている。新生銀もSBIと地方創生分野で協業関係にある。TOBが成立すれば新生銀を「地銀連合」の中核に位置付ける。20年8月にSBIが主導して地域支援会社「地方創生パートナーズ」を設立すると、新生銀は日本政策投資銀行(DBJ)などと資本参加した。
だが、新生銀が21年1月に、SBIと競合するマネックス証券と金融商品仲介業務での包括提携を発表すると両社の関係は急速に悪化。SBIは新生銀が6月に開いた株主総会で、同行の工藤英之社長ら複数の取締役選任議案に反対票を投じるなど対立姿勢を強めてきた。
事業会社が銀行の株式の20%以上を取得するなどして主要株主になる場合は金融庁の認可が必要で、金融庁は9日、SBIに主要株主認可を出した。
1999年に北尾吉孝氏がソフトバンクグループのベンチャー出資会社として設立し、社長に就任。インターネットでの株取引仲介を中核に成長し、証券や銀行事業のほか資産運用や保険など幅広い金融事業を手掛ける。
新生銀行
前身の日本長期信用銀行が1998年に特別公的管理を申請し、一時国有化された。米リップルウッド・ホールディングスを中心とする投資組合が買収。00年6月に新生銀行に改称した。08年には米投資ファンドのJCフラワーズが筆頭株主になったが、19年に売却。SBIホールディングスは20年12月に筆頭株主になった。
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