JR北、特急を減便・減速 安全優先、年16億円減収
北海道旅客鉄道(JR北海道)は4日、特急列車の減便・減速を柱とする11月上旬のダイヤ改正方針を発表した。相次ぐ特急の事故を受け、利便性向上から安全優先に大きくかじを切り、輸送能力を落とす異例の対応に踏み切る。赤字の鉄道事業には逆風だが、これ以上の安全の欠如は耐えられないと判断した。
今回の対応は、検査修繕の余裕を確保するための減便と、車両の消耗を抑えるための最高速度引き下げの2つからなる。ダイヤの詳細は9月下旬に発表する。
減便では札幌―函館、釧路、旭川の3方面で1日あたり上下計8本減らす。最も影響の大きい札幌―函館は現行ダイヤの22本から18本に減る。7月の事故を受けて同型ディーゼルエンジンを積んだ特急の運行を停止、同区間は既に16本に減っている。原因が究明できない間は12本にまで減る可能性がある。
減便により、導入から20年近くたった「283系」の車両に余裕を持たせる。57両のうち現在は38両が運行し、ダイヤ改正で運行が26両、控えが31両になる。検査手法は変えないが、運転所での日々の点検で少しでも様子がおかしければ車両を切り替えやすくすなる。
283系は勾配やカーブの多い石勝線を多く走った。「当初の利用計画に誤りはなかったが、時間がたつにつれ検査修繕の方法を変える必要があったのではとの反省がある」と野島誠社長は本社での記者会見で述べた。
新型車両導入などで最高時速を130キロメートルまで引き上げ、時間短縮を図ってきたが、10~20キロメートル落とす。札幌―釧路は4時間11分と20分延びる。代わりにエンジン、車輪、車両の負荷が15%減る。
減便・減速とも安全が確保できるまでとし、解除の見込みは定まっていない。経営責任を取るとして9月から3カ月間、役員報酬を10~30%削減する。石勝線トンネルでの特急脱線事故後の2年前以来となる。
経営には年16億円の減収として響く。11月からの実施のため、2014年3月期の業績への影響は限られるが、鉄道事業の売上高の2%に相当。300億円規模の営業赤字にさらに重荷となる。
「札幌近郊の利用促進や経費の減少で利益の落ち込みを抑えたい」とした後、野島社長は「まずはトラブルによる減収を発生させないことが大事だ」と続けた。想定外の事態を避けることが大切との考えを示した。
これから冬に向け、積雪や暴風により運行環境はさらに厳しくなる。利便性を犠牲にしてもリスクを減らすという意味では、利用の少ないローカル線の廃線が視野に入ってもおかしくはない。
東日本旅客鉄道(JR東日本)との車両保守などの技術交流は緒に就いたばかり。結果が表れるには時間がかかる。安全確保に向け減便・減速という異例の手段を取っただけに、もう後はない。
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