中国籍脱走者を特別手配 オウム以来16年ぶり
11日午前10時半ごろ、広島市中区吉島町の広島刑務所で、受刑者の男が行方不明になり、刑務所は男が脱走したとみて広島県警に通報した。県警は逃走容疑で逮捕状を取り、中国地方の他の4県と香川、愛媛両県警に捜査協力を依頼。警察庁は同庁の特別手配要綱に基づき特別手配した。同庁によると、特別手配は1995年のオウム真理教の元信者以来。
県警や刑務所によると、男は殺人未遂や公務執行妨害などの罪で服役中だった中国籍の李国林容疑者(40)。2005年に盗み目的で民家に侵入し、警察官に拳銃1発を撃ったなどとして岡山地裁で懲役23年の判決を受けた。逮捕された後に警察車両を奪い、一時逃走している。
刑務所によると、所内のグラウンドで運動中、李容疑者がいないのに刑務官が気付いた。作業服が脱ぎ捨てられており、上下白色の肌着姿で逃げたとみられる。身長173センチ、体重66キロで丸刈り頭。
刑務所は昨年9月から今年1月までの予定で東側外塀の工事をしていた。李容疑者はグラウンドの周囲にある高さ2.6メートルの内塀を、近くの倉庫に足をかけて乗り越え、職員の管理棟の屋上伝いに工事区域内に入って、高さ約5メートルの外塀まで到達。外塀の内側に業者が設置したパイプ製の足場を登り、外に出たとみられる。
本来なら東側外塀には鉄製の防犯線が張られ、切れるとブザーが鳴る仕組みだったが、工事が完成間近だったため、今月初めに防犯線が一時的に取り外されていた。外塀の内側には防犯線が張られた部分もあったが、ブザーは鳴らなかった。
記者会見した同刑務所の山崎秀幸総務部長は「申し訳ない。二次犯罪が起きないことを祈るばかりだ」と謝罪した。
近くの工事現場で警備中だった男性(51)は午前10時半ごろ、男が塀から落ちるのを目撃した。「尻もちをついて転がった後、小走りで逃げた」と話した。
現場は広島市の平和記念公園の南約1.5キロでマンションや民家が立ち並ぶ住宅街。〔共同〕