パナソニック、JVCケンウッド株の大半を売却へ
資産圧縮急ぐ
JVCケンウッドは5日、筆頭株主のパナソニックが保有する同社株式のほぼ全てを市場で売却すると発表した。パナソニックは2012年3月期に大幅な最終赤字となる見通しで、資産圧縮を目的に保有株の売却を加速する。パナソニック創業者の松下幸之助氏の肝煎りで旧日本ビクター(現JVCケンウッド)を子会社化してから58年。すでに事業面での関係はなくなっていたが、株式売却によって名実ともに提携関係を解消する。
1954年 | 松下電器産業(現パナソニック)が日本ビクターを完全子会社化 |
76年 | ビクターがVHS方式のビデオを発売。その後、松下が同方式を採用 |
2007年 | ビクターにケンウッドとスパークス・グループが資本参加、松下の子会社から持ち分法適用会社に |
08年 | ビクターとケンウッドが経営統合、JVC・ケンウッド・ホールディングス(現・JVCケンウッド)発足 |
11年 | JVCケンウッドが増資、パナソニックの持ち株比率は20%未満に低下 |
12年 | パナソニックが保有するJVCケンウッド株を売却へ |
売却は売り出し方式で実施する。約2422万株を処分し、パナソニックの持ち株比率は現在の19.28%から1.75%に低下、筆頭株主から第7位株主になる。パナソニックはいずれ全株式を売却する方針で、投資家の需要動向に応じて残りの242万株を売却するオプションも付けた。売り出し価格は17~19日のいずれかに決める。JVCケンウッド株の5日終値(262円)を基に計算すると、売却額は最大70億円程度になる見込み。
パナソニックは1954年、旧日本ビクターを子会社化した。松下幸之助氏の意思で自主独立経営を認められたビクターは、家庭用ビデオ(VHS方式)の開発に成功して一時はグループの業績に寄与した。
その後、AV(音響・映像)製品の不振などでビクターの業績が悪化。パナソニックは旧ケンウッドとスパークス・グループがビクターに資本参加した07年に子会社から外した。昨年1月のJVCケンウッドの公募増資に伴い持ち分法適用会社からも外れた。
パナソニックは毎月JVCケンウッドが開いていた株主協議会への首脳の参加を11年4月から取りやめた。「かつての親と子のような関係ではなくなっていた」(パナソニック幹部)といい、長年続いた経営への関与はこの時点で完全に終わり、保有株を売却する方針であることも既定路線とみられていた。
パナソニックは、本業との関係が薄れた取引先の株式について、順次売却を進めている。昨年12月には、長年の持ち合い関係にあるダイキン工業や小糸製作所の株式を一部売却していた。
パナソニックが保有株の売却を急ぐ背景には、急速に悪化した業績の影響がある。三洋電機のリストラやテレビ、半導体の事業縮小などによる人員削減で12年3月期は4200億円の連結最終赤字となる見通し。保有株式の圧縮で手元資金を確保するとともに、経営効率の改善を進める。
金融機関もパナソニックが保有株を手放すことを前提に、JVCケンウッドと経営再建のあり方を協議してきた。今回の売却によって、JVCケンウッドの経営や取引先との関係にはほとんど影響はないと見られる。
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