性的被害の申告14%、19年犯罪白書 DVなども低迷
強制わいせつなどの性的事件の被害者のうち、警察などに被害申告した人は約14%にとどまることが29日公表の「2019年版犯罪白書」で分かった。ストーカー被害の申告も約21%、ドメスティックバイオレンス(DV)も約11%と低迷。性犯罪などの申告のしづらさが改めて浮き彫りとなり、法務省は調査結果を性犯罪に関する総合的な施策の検討に生かす。
調査は何らかの事情で被害者が申告せず、警察などの公的機関が把握していない犯罪がどの程度あるかを把握するのが狙い。同様の調査は5回目で12年以来。無作為に選んだ全国の16歳以上の男女6千人を訪問し、3500人から回答を得た。
過去5年間に強制性交や強制わいせつ、痴漢やセクハラといった性的被害を受けた人は女性30人、男性5人の計35人いた。うち捜査機関に申告したのは5人(14.3%)で、大半は申告していなかった。
申告しなかった理由を複数回答で尋ねたところ「それほど重大ではない」が10人で最も多く、「どうしたらよいのか分からなかった」(8人)が続いた。「捜査機関は何もできない(証拠がない)」「知られたくなかった」(いずれも4人)との回答もあった。
性的被害を捜査機関へ申告した割合は過去4回の調査でも9.7~18.5%にとどまっている。
今回は新たにストーカー行為とDVの被害申告の状況も調査対象に加えた。被害を申告した割合はストーカーが21.4%、DVが11.5%で、性的被害と同様に低い水準だった。
内閣府男女共同参画局によると、都道府県ごとに性犯罪・性暴力被害者向けのワンストップ支援センターが相談を受け付けているほか、警察庁もストーカー被害防止の情報発信サイトを運営している。だが申告をためらう被害者はなお多い。
捜査幹部は「つらい経験を他人に明らかにするという心理的な負担は大きく、申告を見送る人が多いのではないか」とみている。
治安に関する認識も尋ね、日本の治安を「良い」と答えた人は42.7%、「悪い」と答えた人は24.9%だった。刑法犯認知件数のピーク時(02年)に近い04年調査と比べると、「良い」は29.5ポイント増え、「悪い」は36.1ポイント減った。