富士山大規模噴火の降灰対策、中央防災会議が検討開始
富士山の大規模噴火を想定し、政府の中央防災会議の作業部会は11日、首都圏に大量の火山灰が降った際の対策について議論を始めた。降灰で交通網やライフラインなど都市機能がマヒする恐れがあり、社会生活や経済活動への影響を最小限に抑える対策を検討する。
11日夕に東京・霞が関で「大規模噴火時の広域降灰対策検討ワーキンググループ」の初会合を開いた。委員は火山や防災の専門家など14人。主査に就いた藤井敏嗣東京大名誉教授は冒頭、「近代都市が火山灰災害に見舞われたことはなく、いろいろな分野の知恵が必要だ」と述べた。1年程度で検討内容を取りまとめる予定。
この日は今後の議論の進め方や被害想定の前提条件を確認。被害が想定される「交通」「ライフライン」「建物・設備」など5分野の計17項目について、内閣府が国内外の火山被害事例から想定される降灰量による影響を説明した。
たとえば、道路は降灰が1ミリから視界不良になり、10センチで車が走行不能になるケースが相次いだ。1センチ前後で発電所の停止や送電線への火山灰付着による停電が始まり、5センチ前後で上水道も被害を受ける例が多かった。
今後は発生する被害を想定し、「除灰」の方法や処分場確保などの具体的な対策内容についても検討する。
富士山では過去たびたび大噴火が起きている。1707年の「宝永噴火」は16日間にわたり、現在の神奈川県東部で10センチ、東京都心で約4センチの降灰があったとされる。火山灰の総噴出量は約17億立方メートルで、東日本大震災で出た災害廃棄物(4600万立方メートル)の40倍近い。
富士山の周辺自治体などでつくる協議会は、富士山の噴火によって神奈川、山梨、静岡3県の富士山周辺で30~50センチ、首都圏などの外周地域で2~10センチ程度の降灰があると予測している。降灰が経済活動や社会生活にどう影響するかや、除灰の方法や処分場確保などの具体的対策については、これまで検討されてこなかった。