コムキャスト、フォックス買収撤退 スカイ争奪焦点に
【ロンドン=篠崎健太、ニューヨーク=清水石珠実】米メディア大手コムキャストは19日、米同業21世紀フォックスのコンテンツ事業の買収から撤退した。「代わりにスカイの買収に集中する」との声明を出し、英放送局スカイの獲得に専念する方針を示した。スカイを巡ってはフォックスも完全子会社化に動く。市場は既に両社が株式取得価格の引き上げ合戦を演じることを織り込んで動いている、今後も激しい争奪戦が繰り広げられそうだ。
欧州2300万人の契約者に狙い
コムキャストの撤退で、米ウォルト・ディズニーによる713億ドル(約8兆円)でのフォックスのコンテンツ事業買収が固まった。その中にはフォックスが既に持つスカイ株39%が含まれる。残る61%を事実上、ディズニーとコムキャストのどちらが握るかが焦点だ。
メディア王のルパート・マードック氏が率いるフォックスは、2016年末にスカイと完全子会社で合意していた。だがグループ会社が英紙タイムズなどを出しており、英国でのメディア支配を気にした英政府が待ったをかけた。その審査が長引く間に18年2月、コムキャストがスカイ買収に手を挙げたのだった。
欧州が地盤のスカイは、英サッカー「プレミアリーグ」の放映権など優良コンテンツが豊富だ。ディズニーとコムキャストは収入の多くを米国に依存し、売上高に占める米国の比率はディズニーが約7割、コムキャストは9割以上に上る。スカイを傘下に収めれば、事業の裾野が一気に広がる。
インターネットを通じた動画配信が人気の米ネットフリックスは、売上高の過半を海外で稼ぐ。勢いを増す同社に対抗するために、ゼロから事業を立ち上げているのではもはや間に合わない。欧州で約2300万人の契約者を持つスカイ買収は必然の選択肢だった。
現時点ではコムキャスト案支持
英政府は12日にフォックスのスカイ買収を認めた。コムキャストによる買収も先に承認済みで、どちらがより高い金額で株主をひき付けられるかの勝負になっている。
フォックスは11日、スカイ株の取得価格を1株あたり14ポンドに見直した。その日のうちにコムキャストは対抗して同14.75ポンドにつり上げた。スカイの社外取締役らでつくる独立委員会は「株主価値の最大化を重視」する構えで、現時点ではより高い価格を掲げるコムキャスト案を支持している。
19日のロンドン証券取引所でスカイ株は15.08ポンドで取引を終えた。コムキャストの提示額を上回って推移しており「数回の買収価格の引き上げは織り込み済み」(米調査会社モフェットナザンソン)との見方が多い。