晴天下の洪水、どうして……。広島・府中町で川が氾濫
西日本を襲った記録的豪雨の被災地では10日も安否不明者の捜索活動が続いた。ようやく晴天が戻り、浸水した住宅などの後片付けも始まるなか、広島県府中町では住宅街を流れる榎川が氾濫。市街地の広い範囲が水につかった。再び避難を強いられることになった住民は不安と疲労の混ざったため息を漏らした。
府中町によると、榎川の氾濫が見つかったのは10日午前11時すぎ。町は同11時50分、川の周辺地域の1万1065世帯の2万5004人に避難指示を発令した。
榎川は府中大川に注ぐ中小河川で、住宅街の中を流れている。大雨で上流から流れ着いた流木や土砂が、流れが蛇行する場所や橋げたに堆積。川がせき止められ、水があふれ出したとみられる。
県によると、午前11時ごろ、川の近くで作業していた県職員が土砂を含んだ水が大量に流れて来るのを目撃した。その後、土石流が上流の砂防ダムを乗り越えていたことが分かった。町は防災無線で繰り返し、避難を呼びかけ、住民は高台や避難所に逃げた。
川があふれた場所では茶色く濁った水が街に流出。急速に浸水範囲が広がり、住宅や自動車が水につかった。府中町ではこれまでに大雨による土砂崩れが発生しているが、大きな被害は出ていなかった。
氾濫は10日午後になっても続き、町は重機2台を投入して、川をせき止めている流木や土砂の撤去作業にあたった。高齢者を中心に助けを求める119番通報も相次いだという。
榎川が氾濫した場所から約500メートル離れた避難所には約100人の住民が身を寄せた。
自宅に泥水が流れ込み、床上まで浸水したという丸谷治美さん(73)は「7日に避難所から戻り、ようやく日常生活に戻れると思っていたのに」と疲労を隠せない様子。
民生委員を務める松浦由紀子さん(78)は「『ゴオーー』という音が聞こえたと思ったら家の外の道路に濁流が流れていた」と振り返る。「しばらく全身の震えが止まらなかった。もう家に帰るのが怖い」と漏らした。
一方、鳥取県米子市では10日午前1時45分ごろ、民家の裏山が崩れ、土砂が民家1階に流れ込んだ。裏山の斜面が幅30メートル、高さ10メートルにわたって崩れた。住人は2階で就寝中で、無事だった。土砂崩れにより一時、周辺の13世帯42人が近くの公民館へ避難した。
同市防災安全課によると9日午前には雨がやんでいた。山が吸収した大量の雨水が原因となった可能性がある。気象庁は「長雨で地盤が緩んでいる地域もあり、引き続き土砂災害に注意してほしい」と呼びかけている。