DNP、39年ぶり社長交代 「世襲」の指摘も
大日本印刷は11日、北島義俊社長(84)の長男で副社長の北島義斉氏(53)が6月28日付で社長に昇格する人事を発表した。社長交代は39年ぶり。義俊社長は代表権のある会長に就く。IT(情報技術)化や国際化など主力の印刷を取り巻く環境が急速に変化するなか、次世代に経営を託す。ただ、長男の社長就任には「世襲」との批判もくすぶる。
11日に東京都新宿区の本社で開いた記者会見で、義俊社長は社長交代の理由として「世界は急速に変化し、ビジネスも複雑になっている。第三の創業を起こす、さらなる変革が必要だと感じていた」と述べた。
義俊社長は39年の在任期間に、バブル崩壊や出版印刷の減少などを経験。その中で印刷技術を食品パッケージや半導体、液晶ディスプレーなどの分野に応用するなどして事業領域を拡大してきた。社長就任当時に3700億円程度だった売上高は、約4倍の1兆4122億円に拡大させた。
ただ、IT化や国際化などでビジネス環境の変化がさらに加速。そんな折、義斉副社長が「これからの発展のために、さらなる変革が必要だ」と訴えた。「経営に対する考えが一致している」と社長交代を決断。4月8日にその意志を伝えた。
バトンを受ける義斉副社長は2001年の取締役就任後、情報コミュニケーション部門を担当。企業から事務作業を請け負うBPO事業やITサービスなどを同社の事業の柱に育ててきた。義斉副社長は「社会課題の解決につながる新しい価値を創出し、あらゆる構造改革を進める」と強調。義俊社長が進めてきた事業多角化の路線をいっそう推進する考えだ。
会見では今回の社長交代が「世襲」にあたるとの指摘もあった。義俊社長は「大きな弊害は特にない。(世襲により)結果的に事業が継続的に行える」と反論。義斉副社長も「印刷業は取引先との信頼関係など人脈が重要で、安定的な成長を達成できる」と述べた。「家業」にありがちなしがらみにとらわれず、変革を進められるか。新社長の手腕が問われそうだ。
(亀井慶一、広井洋一郎)
◇大日本印刷
北島 義斉氏(きたじま・よしなり)87年(昭62年)慶大経済卒、富士銀行(現・みずほ銀行)入行。95年大日本印刷入社、01年取締役、05年専務、09年副社長。