17年賞金女王の鈴木愛(25=セールスフォース)が、今季2勝目となるツアー通算11勝を挙げた。

サスペンデッドになった第3ラウンド(R)終了後に最終Rが行われ、首位から出て4バーディー、2ボギーの70で回り通算12アンダーの276で、日本勢による激しいV争いを制した。

目標にする全英女子オープン(8月1日開幕)出場権獲得と2年ぶり賞金女王へ、前進する優勝になった。

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憧れの人が最終18番で待っていた。鈴木の優勝が決まると、元世界ランク1位で大会アンバサダーの宮里藍さんと抱き合い「あそこから寄るとは思っていなかったよ。本当にスゴイね」と言葉をかけられた。比嘉、河本、穴井ら日本人による激しいV争い。勝負を決めたのは16番パー3だった。

15番で4メートルのバーディーパットを沈め、頭ひとつ抜け出した直後。第1打が2段グリーンの上に飛び、12メートルの難しいパットが残った。ボギーなら再び比嘉に並ばれる。これを神業の1打で、ピンそば30センチへ。パーでしのいだ場面を、鈴木は「あそこは打ち出しのタッチとラインが合わないと全然、寄らない。パターに救われました」と振り返った。宮里さんも「あれは10回に1回(の確率)。たぶん3メートルはオーバーする。それを決められるかどうかだと思った。ゴルフは最後はパッティング。それを体現してくれた」と褒めた。

徳島で育った小学5年の時、テレビで見た宮里さんにくぎ付けになった。直後、1歳下の妹花奈さんとゴルフを始めたが「プロになるとは思っていなかった」という。14年の歳月が流れ「まさか藍さんの大会で優勝できるとは。自分が一番ビックリです」と笑顔だった。

誰より練習をする努力はツアーでは有名で、代償として左の膝や足首は悲鳴を上げる。この日は午前3時起床で治療に専念。サスペンデッドになった第3Rの残りを含む28ホールをこなし、残り4ホールは「痛い、痛い」と漏らしていた。

獲得賞金額で4位に浮上した。目標の全英女子オープン出場と2年ぶり賞金女王へ前進する価値ある優勝だ。「愛」が、憧れの「藍」に1歩近づいた。【益子浩一】