えちぜん鉄道と福井鉄道は4年前から相互乗り入れを行うようになり、利便性が増した。前回はややマニアックな話題となったが、今回は永平寺や芦原温泉など観光の足としてはもちろん、福井市近郊の移動の足としても便利な両鉄道を紹介したい。もちろん鉄道ファン向けの要素もあります。(2019年6月訪問)
まずは窓口で、これを購入した(写真1)。「福井鉄道・えちぜん鉄道共通1日フリーきっぷ」。主に土日祝日限定で両社の鉄道路線が1日乗り放題で1400円という優れた切符である。福井から勝山までが片道770円なので単純な往復だけでも元が取れてしまう(※)ので買わなければ損である。
最初に向かったのは永平寺口。以前はここから永平寺線が分岐していたが廃線となり、現在はまさに「口」である。駅の歴史を詳細に書いていくと、それだけで文字数が足りなくなるので割愛するが、廃線跡は遊歩道になっている(写真2、3)。またホームをはさんで新旧駅舎がそろっているのも特徴で、旧駅舎は「寅さん」ロケ地の記念碑とポスターがある(写真4、5)。新駅舎側には最初に路線を敷いた旧京都電燈の古市変電所は旧駅舎とともに登録有形文化財となっている(写真6)。
勝山は前年に訪れたので、福井口に戻って三国芦原線に乗り換え。こちらも有名観光地が並んでいる。下車したのは、あわら湯のまち駅(写真7)。文字通り、芦原温泉の最寄り駅だ。以前、国鉄の三国線が、現在のえちぜん鉄道に寄り添うように走っていた。北陸本線の金津駅から分岐して、ここで合流。えちぜん鉄道の前に路線を運営していた京福電鉄と相互乗り入れする形で三国港駅まで走っていた。
で、ここからが少しややこしいが、国鉄三国線は京福電鉄に敗れる形で廃線になった。当時の駅名は「芦原」で三国線が廃止されると「芦原湯町」になり、金津は「芦原温泉」に改称。要は芦原温泉を連想させる駅が2つできた。前者は2003年に現在のひらがな駅名となったが、温泉街まで徒歩で行けるのは、ここあわら湯のまちで、JR芦原温泉からはバスが必要な距離だ。ただしJRは特急停車駅で北陸新幹線の駅も設置されることになっており、他県から温泉街への流動はJRの駅が勝っている。
温泉街で昼食タイム。そば屋さんに入る。人気メニューという、かたやきそばをいただく。ちなみに午前中は越前そば(写真8、9)。そばづくしだが、お昼はビールも忘れず注文した(笑い)。その後、終点の三国港に至る。風情のある終点駅だ(写真10)。以前は東尋坊まで線路が延びていたそうだが戦時中に休止となり、その後廃線となった。あわら湯のまち、三国、三国港のいずれからでもバスで行ける。
そして折り返してからが、観光というより鉄道ファンとしての旅だ。福井鉄道とえちぜん鉄道の線路がつながる田原町(写真11)。以前から乗換駅ではあったが、線路がひとつになって利便性が増した。福井鉄道は道路との併用区間が存在するため、路面電車である。田原町から武生までの約20キロを北陸本線と並行するように走るが、JR福井駅(写真12)と線路が微妙に離れている(歩けない距離ではない)ため、福井駅に向けては支線があり、分岐駅である福井城址大名町駅では構造上、福井駅に向かう電車は戻ってきてスイッチバックする光景が見られる(写真13、14)。電車はどんどんやって来るのでスイッチバックが大好きな私は40分ほど、その光景を見ていた。
ゴールはコトコト揺られながら武生(たけふ)である。JR武生駅と越前武生駅は微妙に離れているので小走りに駆けてサンダーバードに飛び乗った(写真15、16)。この時は福井鉄道の駅で降りる機会が少なかったので、今度訪れた際は、ぜひ福井鉄道中心の旅程を楽しみたい。【高木茂久】
※えちぜん鉄道のみ、福井鉄道のみのフリー乗車券や観光地とセットになった切符もある。詳しくは両社のHPで。