3度目の連覇、通算9度目の優勝へ、大相撲の横綱照ノ富士(31=伊勢ケ浜)が、いよいよ稽古を本格化させた。3日、名古屋市の佐渡ケ嶽部屋に、名古屋場所(9日初日、ドルフィンズアリーナ)前としては初めて出稽古。同じく出稽古に来た新入幕の豪ノ山を三番稽古に指名し、力を十分発揮させながら9勝3敗と圧倒した。4場所休場明けから復活優勝した、先場所同様の強さを見せつけた。

     ◇     ◇     ◇

まさに格が違った。照ノ富士が、今場所前初の出稽古で指名したのは、先場所十両優勝の豪ノ山。ともに14勝1敗の好成績での優勝だったが、実力差は歴然だった。圧力に定評がある新鋭の立ち合いを受け止め、持ち味を発揮させてから、最後は勝つ-。稽古を見守った解説者の舞の海秀平氏は「豪ノ山の立ち合いを問題なく受け止めていた。先場所の時と同じような状態に感じる」と、優勝争いの中心だと太鼓判を押した。

初めて胸を合わせた豪ノ山の予想外の馬力に、3番は不覚を取った。あえて土俵際まで押させた後、踏ん張りきれず土俵を割り「つえー」と、苦笑いする場面も。ただ相撲を取りつつ動きの止まった豪ノ山に「そこで終わっちゃダメだ。力を抜くな」などと助言。終始、稽古をつける形で、9勝3敗以上の力の差、仕上がりの良さを印象づけた。

1日に部屋で稽古中にぎっくり腰を発症した。だが前日2日は同部屋の関取衆と10番相撲を取った。関係者によると2日夜に、この日の出稽古を決めた。出稽古後は取材に応じなかったが表情は充実。腰痛の影響が少ないこと、年内に優勝回数を2桁に届かせたいという、大目標への思いの強さを示すには十分だった。

何より横綱の責任感が原動力だ。今場所は豊昇龍、大栄翔、若元春の3関脇が大関昇進に挑む。自身との一番をいかに戦うかが、昇進に影響することは分かっている。万全で迎え撃つのが横綱の務め。また新入幕力士に胸を出し、引き上げるのも横綱の務めと、この日、佐渡ケ嶽部屋にいた関取衆に示した。相撲界の未来を背負いながら9度目の優勝に挑む。【高田文太】