横綱照ノ富士(31=伊勢ケ浜)が、3場所連続全休からの復活優勝を果たした。

1差で迎えた2敗の関脇霧馬山との直接対決。寄り切りで制して13勝目を挙げ、千秋楽を残して6場所ぶり8度目の賜杯を決めた。3場所以上続けて全休して優勝した横綱は3人目。1989年初場所を制した北勝海(現八角理事長)以来34年ぶりの復活劇となった。

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元関脇安美錦の安治川親方(44)は、伊勢ケ浜部屋の部屋付き親方だった頃、弟弟子の照ノ富士に膝の手術をするように助言していた。約22年半の現役生活の大半を右膝のケガと闘ってきただけに、膝の痛みを抱えながら現役を続ける苦労を人一倍理解する。「(当時の照ノ富士の膝は)使えば使うほど、悪くなっていく」状況だった。だからこそ、「どこかで手術するしかないんじゃないか」と後押しした。

最終的に、照ノ富士は師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)と相談した上で、昨年10月に両膝の内視鏡手術を受けた。信頼する兄弟子からの言葉は、大きな決断に踏み切る上で背中を押したに違いない。安治川親方は「思い切ってメスを入れて、もう1度現役をやろうと思えるのが彼の良さであり、横綱としての責任感なんだろう」と言った。

昨年12月に伊勢ケ浜部屋から独立し、6月中旬に東京・江東区に創設する安治川部屋での部屋開きに向けて準備する。場所中は部屋の力士たちの活躍を気にかけながら、両膝にサポーターをつけて土俵に上がる照ノ富士を追った。復帰場所で8度目の優勝を飾った弟弟子に「体が続く限り、頑張ってもらいたいね」とエールを送った。【平山連】