増位山太志郎
著者のコラム一覧
増位山太志郎元大相撲力士

1948年11月、東京生まれ。日大一中から一高。初土俵は67年1月場所、最高位は大関。引退は81年3月場所。引退後は日本相撲協会で審判部副部長を務めた。74年「そんな夕子にほれました」、77年「そんな女のひとりごと」などがヒット。画家として二科展入選の常連。「ちゃんこ増位山」(墨田区千歳)を経営。

<2>「増位山は相撲を取らないで歌ばかり歌っている」と周囲から勘違いされた

公開日: 更新日:

 好きなこと、興味があることにはだれでも夢中になれる。それを大切にしてほしいですね。

 幼少からの歌好きが進学した日大一中でさらに加速していきました。その頃からポール・アンカとかニール・セダカとか洋楽を聴くようになって。日本ならフランク永井さん、三橋美智也さんとか。いろんな曲を聴くようになり、ますます興味を持ち始め、歌手になりたいと思うようになりましたね。でも、ツテもないし、歌手になるなんて夢物語の世界で。無理だなと思いましたね。

水泳を断念、力士になってひょんな縁で歌手に

 当時は水泳をやっていたんです。中学を卒業してそのまま日大一高に進んで、自分ではっきり目標のタイムを決め、それを切れたら大学に進学して水泳を続けよう、切れなかったら力士になろうと決めていました。でも、切れなかったので力士になったんです。

 ただ、歌好きは変わりませんからね。力士になって千秋楽に部屋にたくさんお客さんが来てお祝いになるんだけど、歌好きの力士が歌わされるわけです。もちろん僕も歌いました(笑い)。

 その中に力士から演芸評論家になった小島貞二さんがいらして、私を見て「そんなに好きなら、レコードを出そうよ。私が歌詞を書くから」と言われたわけです。

 小島さんは小林旭さんの「恋の山手線」を作詞した人で、私はデビュー曲の「いろは恋唄」を出しました。歌手になろうと思っても、もし力士になっていなかったらなれていなかったろうし、うまい具合に世の中が回ったのかな。人の縁なんてどこで何がつながるかわからない。つくづくそう思います。

「そんな夕子」がミリオンセラーに

 その後、別のレコード会社から2枚目の「両国エレジー」という曲を出しました。これはまったく売れませんでした。それで名プロデューサーだった曽根一成さんが父のもとに「関取に歌ってもらいたい」と曲を持ってやってきましてね。

 父は歌が嫌いじゃないし、相撲のことばかり考えてたら世の中では通用しないし、自分の好きなことをひとつでもやった方が肩の力が抜けていいから、歌ったらいいじゃないかと言ってくれた。それでテイチクから出したのが3枚目の「そんな夕子にほれました」です。作曲は「いろは恋唄」と同じ山路進一さんでした。曽根さんは先代の林家三平師匠の海老名家のお宅にお世話になっていたので、女将さんの香葉子さんに「作詞してみないですか」と持ちかけたんですね。それでできたのがこの曲です。夕子は海老名家のお手伝いさんの名前です。

 出したらビックリですよ。あっちでもこっちでも歌がかかって、「そんな夕子」はアッという間に130万枚のミリオンセラーになりました。僕はレコーディングしただけ。私の知らないところでお皿(レコード)が回ってヒットした。

 でも、周りの人は勘違いするわけです。「増位山は相撲を取らないで歌ばかり歌っている」とかね。売れたらお金も入ると……。

 歌唱印税はそれなりに入ったけど、それが目的で歌ったわけじゃないから、釈然としないというかね。男の社会はやっかみが多い。むしろそれが大変でした。=つづく

(聞き手=峯田淳/日刊ゲンダイ)
 

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 2
    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  3. 3
    試合ガタ減り、選手クーデター未遂…“不毛の8年”で晩節汚した青木功JGTO会長ついに退任

    試合ガタ減り、選手クーデター未遂…“不毛の8年”で晩節汚した青木功JGTO会長ついに退任

  4. 4
    岸田自民は補選「全敗」確定情報…島根1区も水面下で“白旗”揚げちゃった? 党幹部すら諦めモードの末期状態

    岸田自民は補選「全敗」確定情報…島根1区も水面下で“白旗”揚げちゃった? 党幹部すら諦めモードの末期状態

  5. 5
    ソフトB山川穂高を直撃「古巣への不義理、SBファンの拒否反応をどう思っていますか?」

    ソフトB山川穂高を直撃「古巣への不義理、SBファンの拒否反応をどう思っていますか?」

  1. 6
    松本人志に文春と和解の噂も、振り上げた拳は下ろせるか? 告発女性の素性がSNSで暴露され…

    松本人志に文春と和解の噂も、振り上げた拳は下ろせるか? 告発女性の素性がSNSで暴露され…

  2. 7
    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  3. 8
    「アンメット」の“三瓶先生”にハマる視聴者続出!杉咲花も惚れた若葉竜也「無愛想な魅力」の原点

    「アンメット」の“三瓶先生”にハマる視聴者続出!杉咲花も惚れた若葉竜也「無愛想な魅力」の原点

  4. 9
    長渕剛が誹謗中傷に《具合が悪い》と告白…《話があるなら、来てほしい》と性被害告発の元女優に呼びかけ

    長渕剛が誹謗中傷に《具合が悪い》と告白…《話があるなら、来てほしい》と性被害告発の元女優に呼びかけ

  5. 10
    松本人志“性的トラブル報道”へのコメント 優木まおみが称賛され、指原莉乃が叩かれるワケ

    松本人志“性的トラブル報道”へのコメント 優木まおみが称賛され、指原莉乃が叩かれるワケ